(※写真はイメージです/PIXTA)

会社が潰れる本当の原因は、赤字や債務でなく「資金不足」。つまり、手元のキャッシュを減らさないよう、助成金の活用や融資といった様々な資金繰りや、節税などの工夫を行えば、倒産リスクを大いに減らすことが可能ということです。資金繰りを専門とする税理士が、会社も社員も得する「ひと工夫」を紹介します。たとえば「扶養内で働きたい」や「正社員でなくてもいい」など、雇用者のニーズに沿う働き方を推進すると、実は会社側のメリットも非常に大きいということをご存じでしょうか。

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「多様な働き方」を推奨すると節税効果アリ

採用で重要なのは、働く人と働いてほしい会社のニーズをマッチングさせること。

 

「自由な契約で自由に働きたい」

「正社員でなくてもいい」

 

そう考えている社員や入社希望者がいたら、業務委託契約を検討。正社員として雇用契約を結ぶのではなく、社外スタッフとして業務を外部発注(外注)する。

 

正社員として採用する場合と外注として仕事を頼む場合を比べると、契約形態が異なる(正社員は雇用契約、外注スタッフは業務委託契約)ため、賃金が変わる。

 

正社員に支給するのは給料、外注スタッフに支払うのは外注費。正社員に給料を支給する場合は会社が社会保険料を負担するが、外注スタッフの場合はその必要がない。

 

また、給料には消費税がかからないが、外注費は課税取引。仮に外注スタッフに500万円払うとすると、そのうちの50万円くらいは消費税(10%の場合)であるため、会社が納める消費税から50万円控除できるので、給料で500万円払うより消費税が削減できてしまう。

ただし「節税目的でスタッフを外注化」は本末転倒

もちろん、このようなメリットを狙ってスタッフを外注化するのは本末転倒。大事なのは、会社として多様な働き方を推奨すること。

 

今どきは「正社員になって定年まで勤める」だけでない。派遣社員、契約社員、フリーランス、副業などなど、さまざまな働き方が選べる。

 

働く人は自分に合う働き方が選べる。会社側は、正社員以外の働き方を求めている人に働いてもらうことができ、優秀な人が確保できたり、人手不足を解消したりしやすくなる。

 

重要なのは、業務委託契約で働いてもらうための仕組みをきちんと作ること。

 

「自由に働いてほしい」と思っていても、その意図が仕組みという目に見える形になっていなければ、税務署は「消費税削減のために外注化したのでは?」と考える。

税務署に否認されないための「仕組み作り」

仕組み作りのポイントは3つ。

 

1つ目は、外注で働いてもらう人と業務委託契約書を交わす。契約書があることで、会社と外注スタッフが合意のうえで業務委託という形態を選んだことが明確になる。

 

2つ目は、外注スタッフに請求書を発行してもらう。請求書によって報酬をやり取りすることで、業務の委託者(会社)と受託者(外注スタッフ)の間で外注の実態があることが証明できる。外注スタッフは社員ではないので、給料明細はいらない。タイムカードのような勤怠管理も基本的には不要。

 

3つ目は、外注スタッフが確定申告をすること。外注スタッフは個人事業主になるので、自分で収入を管理し、所得を申告してもらう必要がある。外注スタッフが個人で確定申告し、納税していれば、税金の面でも業務委託の関係であることが明確になる。税務署の否認対策では、ここが重要。

 

正社員と業務委託については、外注スタッフがどんなふうに働いているか、正社員の働き方とどう違うか、責任の所在はどうなっているか、といったことが注目され、もちろんそれらも重要ではあるが、基準があいまいなので、大切なことは、外注スタッフが会社と業務委託契約書を交わし、自ら請求書を発行し、確定申告し、納税する。この事実が重要なのだ!

パートさんの勤務時間は1日6時間以内だとWin-Win

103万円の壁、106万円の壁、130万円の壁、150万円の壁――アルバイトやパートで働く人たちには、いくつもの「壁」がある。

 

通常、壁にぶつかったら乗り越えようとするのだけど、アルバイトやパートの人たちは壁を乗り越えないように注意している。

 

なぜなら、壁を越えると手取りが減るため。

 

彼らが求めているのは、正社員のような形態ではなく、あくまでも短時間就労者として働くこと。そのなかで、できる限り手取りを増やしたい。

 

会社としては、その要望が叶うように調整してあげることが大事。働きやすい環境になるほどアルバイトやパートの応募が増えやすくなり、人手不足解消にもつながる。

 

そのためのポイントは、1週間の所定労働時間、または1ヵ月の所定労働日数を一般社員の3/4未満にすること。

 

正社員の労働時間が8時間なら、アルバイトやパートは6時間未満。

 

正社員の労働日が週休2日なら、アルバイトやパートは16日未満。

 

この水準を超えると、アルバイトやパートの人が社会保険に加入することになり、保険料負担が発生する。保険料負担は手取りが減ることにつながるため、3/4未満に抑えることが大事。

 

社会保険料は働き手と会社の折半であるため、アルバイトやパートの人が社会保険に加入しないのであれば、会社側も社会保険料削減のメリットがある。

 

ちなみに、4つの壁の詳細は以下のとおり。

 

●103万円の壁:103万円を超えた給与に所得税が発生する

 

●106万円の壁:大企業に勤めているアルバイトやパートの人に社会保険料の加入義務が発生する

 

●130万円の壁:中小企業でアルバイトやパートをする人に社会保険料の加入義務が発生し、配偶者や親などの扶養範囲から外れる

 

●150万円の壁:配偶者の配偶者特別控除が減り始める金額


 

菅原 由一

SMGグループ CEO

SMG菅原経営株式会社 代表取締役

SMG税理士事務所 代表税理士

 

 

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※本連載は、菅原由一氏の著書『激レア 資金繰りテクニック50』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

激レア 資金繰りテクニック50

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菅原 由一

幻冬舎メディアコンサルティング

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