(※画像はイメージです/PIXTA)

先週年初来高値を更新し、一時115円突破寸前まで上昇した米ドル/円。本記事では、FX開始直後から第一線で活動している、マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏が、「米金利」と「原油相場」の観点から、米ドル高の今後の展開について考察していきます。

感謝祭のため、週後半は薄商いになる可能性も

今週の木曜日は米感謝祭のため、週後半は薄商いになる可能性が考えられます。こういった場合、ポジションを手仕舞う動きが強まることから、相場の行き過ぎた動きは反動が入りやすくなります。よって、米金利は短期的な「上がり過ぎ」の反動により低下に向かう可能性もあり、そうであれば今週の米金利は、米ドル安要因になる可能性も考えられます。

 

では、上述のようにこのところ米ドル高のリード役のようになっているユーロ安・米ドル高についてはどうなのでしょうか。結論から述べると、ユーロ安・米ドル高は、かりに米金利が短期的な「上がり過ぎ」の反動から低下に向かったとしても、ユーロ高・米ドル安への戻りは限られるかもしれません。

 

ユーロ/米ドルは、10月以降金利差ユーロ劣位拡大にもかかわらず底固い展開が続くなど、一時金利差の影響が低下した局面がありました。米金利が大きく上昇するなかでもユーロ安・米ドル高が限られたのは、原油相場の上昇の影響を受けた可能性があったのです(図表5参照)。

 

出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成
[図表5]ユーロ/米ドルとWTI (2021年6月~) 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

 

ユーロ/米ドルに限らず、代表的な資源国通貨である豪ドルの対米ドル相場は、10月以降ユーロ/米ドル以上に原油相場との連動性が高まったように見えます(図表6参照)。米金利上場が続くなか、原油相場の影響が大きくなったのは、物価の上昇続くなかで、「モノ」の評価に過敏になっている可能性を示している可能性があります。

 

出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成
[図表6]豪ドル/米ドルとWTI (2021年6月~) 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

ユーロ/米ドル、豪ドル/米ドルの行方…カギを握るのは

ユーロ/米ドルや豪ドル/米ドルの行方は、米金利以上に原油相場の動向がカギを握っている可能性があります。10月末にかけて、80米ドルを大きく上回るまで上昇したWTIは、先週にかけて大きく反落しました。米国などが協調して戦略備蓄石油の放出に動く可能性を警戒したためとされますが、さらに原油相場下落となるのか、それとも再び原油相場上昇に転じるのでしょうか。

 

WTIはこの間80米ドル以上に上昇しましたが、2010年以降100米ドル前後まで上昇したことも何度もあったため、絶対水準としては必ずしも「上がり過ぎ」懸念が強いということではないでしょう(図表7参照)。ただ、WTIの過去5年の平均値である5年MAからのかい離率で見ると、印象が変わってきます。

 

 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成
[図表7]WTIと5年MA (1990年~)  出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

 

10月末、WTIが80米ドルを大きく上回ったところで、5年MAからのかい離率はプラス50%以上に拡大しました(図表8参照)。少なくとも2010年以降では最高のプラスかい離率です。絶対的な水準としては、2010年以降、よりWTIが上昇するケースはあったものの、長期移動平均線との関係で見ると、2010年以降では、最も「上がり過ぎ」懸念が強くなっている可能性がありそうです。

 

出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成
[図表8]WTIの5年MAからのかい離率 (1990年~) 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

 

このように原油相場の中長期的な「上がり過ぎ」懸念が強い状況で、米国などが戦略備蓄石油放出に動くなら、原油高抑制、是正にある程度有効になる可能性があります。そんな原油相場が、ユーロ/米ドルや豪ドル/米ドルの行方に影響するなら、原油高に伴うユーロ高・米ドル安、豪ドル高・米ドル安の動きは限られるといえるでしょう。
 

 

吉田恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

 

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

 

【関連記事】

税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

恐ろしい…銀行が「100万円を定期預金しませんか」と言うワケ

 

親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

 

「儲かるなら自分がやれば?」と投資セミナーで質問すると

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
TOPへ