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コロナ禍で世界需要減少で価格暴落
■エネルギー
銀行を含めた金融システムが社会インフラとして重要な役割を果たしているものの再編の波に直面している、という話の脈絡から、このセクションでは、石油やガスを中心としたエネルギーや日本国内の電力セクター等、異なる社会インフラについて書いていこうと思います。
まず簡単にエネルギー業界の全体像を説明してから、始めていきます。
ガソリンや灯油など石油によって精製される製品、またプラスチックなど石油化学製品も我々の生活に密着しており、世界中でも重要な化石燃料資源であります。その業界内では、上流(石油の採掘、生産)、中流(製油所までの輸送)、そして下流(製油所での精製、そして小売りまで)といった部門に分かれており、部門ごとにコロナ禍での影響は様々ですが、同業界全体における一定程度一貫したトレンドは以前からありました。部門ごとに見ていきましょう。
上流ですが、長らく中東などOPEC(石油輸出国機構)参加国により、価格や生産量の調整が行われてきましたし、(1970年代のオイルショックを含む)政治的軋轢が起点となり、原油などの価格が大きく変動したわけです。しかし21世紀に入り大きな変革が訪れました。所謂、北米でのシェールオイル・ガス革命です。
まずシェール(Shale)とは、頁岩(けつがん)という、泥が固まった岩石のうち、薄片状に剥がれ易い性質を持つ岩石のことで、地下深くに埋没すると、地熱や圧力により化学変化して石油分やガス分(所謂シェールオイルやガス)ができます。
米国において、従来は経済的に掘削が困難と考えられていた、地下2000メートルより深くに位置するシェール層の開発が2006年以降進められ、シェールオイル・ガス生産が本格化していくことで風向きが変わりました。
これまで米国は長らくエネルギー輸入国として中東などから多くの原油やガスを仕入れてきましたが、このシェール革命に伴い、米国国内での石油やガス生産量が飛躍的に伸ばし、米国自体がエネルギー純輸入国から2020年には純輸出国へ、と変化していきました。
また米国に加えてロシアの台頭(NonOPEC諸国)も上流の生産量へ寄与することとなり、中東やOPEC(石油輸出国機構)中心であった従来の上流の生産量や価格のコントロールが効きにくくなりました。その後、世界中で石油の過剰供給状態、が見られ、それに追い打ちをかけるように、コロナ禍の急激な世界需要減少に耐えられず、石油の商品価格が大きく下がるという現象が見られました。