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With・Withoutコロナを通じた今後の流れ
このセクションでは、この度の新型コロナウイルス感染拡大による直接的な変化とは必ずしも限らないものの、日本国内のみならず、一定程度世界的な動きとして、変化が見られていくであろう、いくつかのエリアについて紹介していきます。
■教育機関での変化(授業のオンライン化を通じた大学への経営的影響と、教育関係団体への存在意義)
コロナ禍において、休校などから学校教育がデジタル化の流れにかなり遅れを取っている、という認識が広がったかと思います。所謂義務教育や高校までの、学校への登校が必要、もしくは学校という共同体での学びが重視されている場面が多い場所では、今後もDX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでいくかと思いますが、どちらかというと変化には遅いのかな、とも感じます。
一方でコロナ感染拡大が一服し、小中高校が実際に登校を始め、対面して授業を行っているにも関わらず、高等教育(SecondaryEducation)と言われる大学などは、2020年度は依然としてオンライン授業が継続しています。DXの面に関しても、高等教育機関の方が導入の速さ、また今後の変化が早く見える部門である、と考えます。それは経営面へ負の影響が大きい可能性があるからです。
オンライン授業継続は日本以外の海外の大学では広く行われており、米国では教育の質が落ちたとの結果もあるそうです。加えて高等教育のDX化促進として、もちろんコロナ感染対策という面が大きいですが、米国では、既存の対面授業を行わず、オンライン授業で代替するのであれば、年間500ー600万円程度掛かるとされる、大学の高価な学費を払う必要がないのではないか、という強い値下げ要求が生徒側からあり、一部の私立大学では学費減額を承認したようで、既に減収という形で影響が出てきております。
しかしオンライン授業を行っているすべての大学でそのような傾向が見られているわけではないようで、その理由の1つとされているのは、米国への留学生が減少する見込み、という面も影響しているようです。
2020年7月7日に米移民税関捜査局(ICE)が、学校の授業がオンラインのみで行われる場合には、海外からの留学生は同学校への学生ビザ発行を認めず、また米国に入国もできず、現在米国に滞在している場合は、帰国もしくは転校の必要がある、という趣旨の発表をしました。
当時はコロナ感染対策として、ハーバードやMITなど著名な大学も2020年9月からの学期を、オンラインのみとしていた大学も多く、経済活動の回復、また人の往来が必要と唱えるトランプ政権の意向に反している大学への、一種の処罰的なアクションでないか、と見られていていました。この措置の例外はハイブリッド型(所謂物理的に出席が必要なクラスとオンラインクラスの融合)を9月の学期から採用している大学への留学生は引き続き受け入れる、といった方針でした。
その後、大学や企業から様々な反対意見や裁判所の判断もあり、トランプ政権も一旦はこの政策を撤廃し、米国にいる留学生の(対面授業やハイブリッド型の大学への)転校や出国は免れたのですが、同年7月24日に再度米移民税関捜査局(ICE)の発表があり、同年3月9日までに入学手続き済み、もしくは既に入国している留学生は完全オンラインでも留学を続けられる一方で、大学が秋からの新学期の授業をすべてオンラインで実施する場合、外国人留学生の入国を認めないとしました。