(画像はイメージです/PIXTA)

近年では、離婚や再婚をする方が増えてきました。しかし、それによって親子関係や相続関係が複雑化し、血縁から受け継いできた遺産が思わぬ方向へ相続されてしまうリスクがあることも、資産家の方は忘れてはなりません。具体的な対策はあるのでしょうか。長年にわたり相続案件を幅広く扱ってきた、高島総合法律事務所の代表弁護士、高島秀行氏が実例をもとに解説します。

養子縁組+遺言書でも、継父の子への相続は回避不能

すると、健司さんが亡くなれば、健司さんが陽子さんから相続した2億5000万円もの財産は、陽子さんの子どもである大介さんにはまったく相続されず、健司さんと博美さんとのあいだの子で、健司さんと疎遠な関係の裕一さんに全部相続されることになります。

 

したがって、「健司さんは、大介さんという息子がいる陽子さんと結婚したことにより、健司さんと大介さんは親子の関係となる。したがって、大介さんは健司さんの相続人となる」とする、選択肢②は誤りとなり、選択肢③が正解となります。

 

もともと大介さんの母親の陽子さんの財産であった2億5000万円の財産を、陽子さんの子どもである大介さんに相続させるためには、いまから健司さんと大介さんが養子縁組をするという方法があります。

 

ただ、養子縁組をするだけでは、相続分は大介さんが2分の1、裕一さんが2分の1で平等となりますので、半分である1億2500万円もの金額が裕一さんに相続されることとなってしまいます。

 

それを少しでも少なくする場合は、養子縁組をしたうえで、大介さんにすべて相続させるという遺言を健司さんに書いてもらうという方法が考えられます。

 

しかし、これも裕一さんには法定相続分の2分の1、即ち4分の1の遺留分があります。したがって、養子縁組+遺言書という方法を使っても、6250万円は裕一さんのところに行ってしまうということとなってしまいます。

 

健司さんが築いた財産であれば、大介さんも納得はすると思いますが、もともとは大介さんの祖父である山田さんが築き、その娘の陽子さんが相続した財産です。たまたま健司さんが陽子さんと結婚したために、山田さんや陽子さんと全区関係のない裕一さんに相続されてしまうことになったわけです。

 

このように、再婚相手に子どもがいた場合、その子どもにもともと再婚相手が持っていなかった財産が行かないようにする対策は、健司さんの相続の段階では遺留分という強力な権利があるので遅く、山田さんの相続、あるいは陽子さんの相続の段階でしないと回避はできません。

 

本件では、

 

①山田さんの相続の段階で、大介さんを山田さんの養子にして遺言で大介さんに全ての遺産を相続させるという遺言を書いて、そもそも陽子さんが山田さんから相続する財産を少なくしておくこと、

 

②次に、陽子さんの相続の段階で、遺言を書いて大介さんにすべて相続させるとして、健司さんが取得する財産をさらに少なくしておくこと、

 

③健司さんが陽子さんの相続の段階で、陽子さんが山田さんから相続した財産を、健司さんの実子の裕一さんに相続させないことについて理解してくれるのなら、陽子さんが山田さんから相続した遺産については、健司さんが相続権や遺留分を主張しないようにすること

 

などの対策を事前に取っておくことが考えられました。

 

子どものいる相手と再婚する方は参考にしてください。

 

※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

高島 秀行
高島総合法律事務所
代表弁護士

 

 

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