(画像はイメージです/PIXTA)

資産家の高齢男性が亡くなり、遺族は遺産分割と相続税の納付の件で頭を悩ませていました。すると、見知らぬ女性が亡き男性の自筆の遺言書を携え、やってきました。そこに書かれていた内容は「全財産をこの女性に贈与する」というもの。果たして法的な効果はあるのでしょうか。長年にわたり相続案件を幅広く扱ってきた、高島総合法律事務所の代表弁護士、高島秀行氏が実例をもとに解説します。

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資産家男性、愛人に「全遺産を贈与する」と遺言を…

鈴木さんは、貸マンションを何棟も持っている資産家です。鈴木さんには、奥さんの花子さん、子どもに長男の太郎さんと長女のゆり子さんがいます。鈴木さんは子どもたちが独立して解放されたためか、60歳を過ぎて、行きつけの飲食店の若い従業員の愛子さんに入れあげました。愛子さんに資産を全部くれたら愛人になるといわれ、「私が死んだら全遺産を愛子さんに贈与する」という手書きの遺言を書いて渡してしまいました。

 

その後数年して、鈴木さんに病気が見つかり、亡くなってしまいました。

 

花子さんたち遺族は、四十九日の法要のあと、遺産分割と相続税の支払いについて話し合っていたところ、愛子さんが手書きの遺言を持ってやってきて、鈴木さんの遺産は遺言により全部愛子さんのものだと言います。

 

花子さんたちはどうしたらよいでしょうか。

 

①手書きの遺言は無効だから、心配する必要はない。

 

②愛人に対する遺言は無効だから、心配する必要はない。

 

③愛人に対する遺言も有効だから、遺留分を請求するほかない。

 

④愛人に対する遺言でも、事情によっては有効になる場合があり、裁判で争って無効にする必要がある。

 

お金持ちの男性に愛人がいる話はたまに聞くことがあります。また、真面目な男性が高齢になってからそのような相手ができると、免疫がないため歯止めが利かなくなるということも聞きます。今回は、そんな男性が亡くなったら全遺産を愛人に贈与するという遺言を書いて渡してしまったというお話です。

 

まずは、前提として手書きの遺言書は、有効でしょうか。

 

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次ページ手書きの遺言書が有効になる条件

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