2021年7~9月期実質GDP(第1次速報値)について (※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

7~9月期実質GDP成長率前期比年率▲3.0%、2四半期ぶりマイナス成長

 

個人消費前期比▲1.1%、期間中のほとんどで緊急事態宣言が発令中だった

 

輸出は前期比▲2.1%、部品不足の影響で自動車の輸出などが振るわず

 

 

●21年7~9月期第1次速報値では、実質GDP成長率は前期比▲0.8%、前期比年率▲3.0%と2四半期ぶりのマイナス成長になった。一方、21年7~9月期第1次速報値の名目GDP成長率は前期比▲0.6%、前期比年率▲2.5%である。こちらは3四半期連続のマイナス成長になった。名目GDPの季節調整値は540.40兆円で直近のボトムだった20年4~6月期の510.66兆円と比較すると29.74兆円高い水準だが、直近のピークだった20年10~12月期の551.34兆円からは10.94兆円低い水準になった。またコロナ前、直近のピークだった19年7~9月期の563.00兆円からは22.60兆円低い水準になった。年度内にこの水準に届くことは厳しくなった。

 

●ESPフォーキャスト調査11月調査(回答期間:10月28日~11月5日)では、7~9月期の実質GDP成長率の平均予測値は前期比年率▲0.56%だった。また筆者の予測は同▲1.6%だったが、実際は同▲3.0%と大幅な減少率になった。ただ、10~12月期はプラス成長予測が大勢で、今後政府の経済対策が出ることもあり、マーケットでは7~9月期は過去の数字と言った扱いになろう。

 

●新型コロナウイルス新規感染者が8月20日に25,992人と最高の数字になり、7~9月期のかなりの期間は緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が出ていた時期と重なった。飲食店の営業時間短縮や大型商業施設休業等の措置がとられことなどで、7~9月期の実質個人消費は前期比▲1.1%の減少になった。実質家計最終消費支出の前期比は▲1.2%の減少だった。

 

●実質国内家計最終消費支出の前期比は▲1.2%の減少である。その内訳をみると、耐久財の前期比は▲13.1%の減少と2四半期ぶりの減少になった。乗用車販売台数が前期比▲16.3%だったことなどを反映した数字であろう。半耐久財の前期比▲5.0%と2四半期ぶりの減少に転じた。非耐久財の前期比は+0.5%と2四半期ぶりの増加に転じた。サービスの前期比は+0.1%と2四半期連続の増加となった。なお、実質雇用者報酬は前期比+0.1%と2四半期ぶりの増加になった。

 

●実質住宅投資は前期比▲2.6%の減少と3四半期ぶりの減少になった。

 

●設備投資は▲3.8%の減少と2四半期ぶりの減少になった。名目の前期比(季節調整済み)は▲2.9%と2四半期ぶりの減少である。なお、名目の前期比(原数値)は+5.9%と2四半期ぶりの増加である。名目の前年同期比は+2.4%と2四半期連続の増加になった。

 

●供給サイドのデータに基づいて算出した、7~9月期の名目設備投資の供給側推計値の名目原系列前期比は+4.5%で、需要側推計値(仮置き値)の名目原系列前期比は+12.0%であると公表された。法人企業統計が出た時に前年同期比が+3.8%程度より高いかどうか比較することで、7~9月期実質GDP成長率・第2次速報値での設備投資予測の参考となろう。

 

●民間在庫変動の実質・前期比寄与度は+0.3%だった。民間在庫投資の内訳をみると、製品在庫は前期比寄与度+0.2%、流通品在庫は前期比寄与度0.0%であった。また、仮置き値の原材料在庫前期比寄与度は▲0.0%、同じく仮置き値の仕掛品在庫は同+0.1%だった。

 

●実質政府最終消費支出は前期比+1.1%の増加だった。また、実質公共投資は前期比▲1.5%と3四半期連続の減少になった。公的在庫変動の実質・前期比寄与度は▲0.0%であった。公的需要の前期比寄与度は+0.2%だった。

 

●7~9月期外需(純輸出)の前期比寄与度は+0.1%と3四半期ぶりのプラス寄与になった。世界的な半導体不足に加え東南アジアでコロナ感染が広がったため部品不足になり、自動車などの輸出が減少したが、控除項目の輸入がそれ以上に減少したためだ。実質輸出は前期比▲2.1%と5四半期ぶりの減少になった。財は前期比▲2.2%と5四半期ぶりの減少になった、サービスは前期比▲1.8%と4四半期ぶりの減少になった。実質輸入の前期比は▲2.7%と4四半期ぶりの減少になった。財に関しては前期比▲1.7%と4四半期ぶりの減少になった。サービスは前期比▲6.1%と3四半期ぶりの減少になった。

 

●7~9月期のGDPデフレーターの前年同期比は▲1.1%と3四半期連続の下落になった。一方、国内需要デフレーターの前年同期比は+0.6%と2四半期連続の上昇になった。控除項目の輸入のデフレーターが前年同期比+19.0%と2四半期連続の2ケタの上昇となった影響が出ている。一方、7~9月期の季節調整済み前期比をみると、GDPデフレーターは+0.1%、国内需要デフレーターは+0.7%になった。

 

●「令和3年度の内閣府年央試算」の21年度実質GDP成長率見通し・前年度比+3.7%を達成するには、21年度残り2四半期で各々前期比年率+11.0%(前期比+2.63%)が必要であるので、達成は難しいだろう。20年度から21年度へのゲタは+1.8%である。なお、21年度残り2四半期が前期比+0.5%だと21年度実質GDP成長率・前年度比は+2.0%になる。21年度各四半期が前期比+1.0%だと21年度実質GDP成長率・前年度比は+2.4%になる。

 

 

●また、12月8日公表予定の7~9月期第2次速報値では、12月1日の法人企業統計の発表を受けて、設備投資や民間在庫変動が改定される。

 

●法人企業統計では民間在庫変動の伸び率は名目の前年同期比で発表される。GDPの第1次速報値では民間在庫変動・名目原数値・前年同期比寄与度は▲0.1%であった。この内訳に関しては、雰囲気しか教えてもらえないが、4項目で一番大きなマイナス寄与は流通在庫、次のマイナス寄与は原材料在庫、そして仕掛品在庫がプラス寄与で、一番大きなプラス寄与は製品在庫ということだ。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2021年7~9月期実質GDP(第1次速報値)について 』を参照)。

 

(2021年11月15日)

 

宅森 昭吉

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

理事・チーフエコノミスト

 

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 理事・チーフエコノミスト

旧三井銀行(現三井住友銀行)で都市銀行初のマーケットエコノミストを務める。さくら証券チーフエコノミストなどを経て現職。
パイオニアである日本の月次経済指標予測に定評がある。身近な社会データを予告信号とする、経済・金融のナウキャスト的予測手法を開発。その他、「景気ウォッチャー調査」などの開発・改善に取り組んできている。「より正確な景気判断のための経済統計の改善に関する研究会」など政府の経済統計改革にも参画。「景気循環学会」常務理事。
著書に『ジンクスで読む日本経済』(東洋経済新報社)など。

著者紹介

連載【宅森昭吉・理事・チーフ エコノミスト】エコノミックレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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