(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

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大企業・製造業・業況判断DI+1程度と、12月調査+7から低下を予測

 

同・非製造業・業況判断DI+20程度と12月調査比1ポイント上昇、19年12月の水準に

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●3月調査日銀短観では、足元で半導体関連部品の不足状況は改善傾向、自動車などで受注が安定してきたというプラス要因が出てきたものの、エネルギー価格や原材料価格の高騰などのマイナス要因も依然大きい。このため、大企業・製造業の業況判断DIは+1程度と12月調査の+7から6ポイント程度悪化すると予測した。

 

●また、大企業・非製造業の業況判断DIは+20程度と、こちらは12月調査の+19から1ポイント程度改善し、コロナ禍前の19年12月調査の+20に並ぶ水準に戻るとみた。コロナの影響が薄れたこと、今春は賃金のそれなりの上昇が期待されること、インバウンド需要が戻ってきたこと、全国旅行支援効果などがプラス要因になっていると思われる。

 

●この予測は、日銀短観DIと連動性が高いことが知られているQUICK短観(3月調査)やロイター短観(3月調査)などを参考にした。

 

●3月15日に発表されたQUICK短観3月調査の調査期間は3月1日から3月10日である。製造業の業況判断DIは12月調査の+11から5ポイント低下し+6となった。また、非製造業の業況判断DIは12月調査の+28と同じ+28となった。

 

 

●3月23日に発表されたロイター短観3月調査の調査期間は3月8日から3月17日である。3月調査400社ベースの製造業の業況判断DIは12月調査の+8から11ポイント低下し▲3になった。一方、3月調査200社ベースの製造業の業況判断DIは12月調査の+18から9ポイント低下し+9になった。

 

 

●ロイター短観3月調査400社ベースの非製造業の業況判断DIは12月調査の+25から4ポイント低下し+21になった。一方、3月調査200社ベースの非製造業の業況判断DIは12月調査の+25から11ポイント上昇し+36になった。

 

●なお、3月調査の大企業・製造業の業況判断DIが予測通り+1程度なら12月調査の「先行き見通し」+6を5ポイント下回る水準になる。景況感が事前予想より下振れたことになる。一方、大企業・非製造業が予測通り+20程度なら、事前予想の12月調査の「先行き見通し」+11から9ポイント程度と事前の予想より景況感が上振れたということになろう。製造業と非製造業で明暗が分かれるかたちとなろう。

 

●QUICK短観3月調査の製造業の6月までの「先行き見通し」は+5で3月実績の+6より1ポイント低下の見込み、また、非製造業の6月までの「先行き見通し」は+19で3月実績の+28より9ポイント低下の予想である。

 

●ロイター短観3月調査の6月までの「先行き見通し」は、製造業・400社ベースで+10と3月実績の▲3から13ポイント上昇する上昇する見込み、製造業・200社ベースで+19と3月実績の+9からこちらは10ポイント上昇する見込みである。一方、非製造業・400社ベースの6月までの「先行き見通し」は+12と3月実績の+20から8ポイント低下する見込み、非製造業・200社ベースで+20と3月実績の+36から16ポイント低下になる見込みである。

 

●日銀短観の大企業・業況判断DIの6月までの「先行き見通し」は、QUICK短観やロイター短観などを参考にして、製造業は3月実績比6ポイント上昇の+7程度に改善すると見た。部材供給不足が改善してきていることなどがプラス要因だろう。一方、非製造業は3月実績比8ポイント低下の+12程度と予測した。物価上昇の影響、全国旅行支援効果の剥落などがマイナス材料になりそうだ。

 

●3月調査日銀短観の中小企業の業況判断DIは製造業が▲6程度と12月調査の▲2から4ポイント程度悪化すると予測した。非製造業は12月調査の+6から1ポイント程度改善し+7程度になるとみた。この予測値は、景気ウォッチャー調査の企業動向関連の現状水準判断DIなどを参考にして予測した。

 

●参考データの景気ウォッチャー調査の企業動向関連の現状水準判断DI・季節調整値の最近の推移は製造業が22年9月調査45.1、10月調査45.3、11月調査45.2、12月調査44.2、23年1月調査43.1、2月調査43.6と推移している。

 

●一方、非製造業は22年9月調査44.8、10月調査45.9、11月調査45.5、12月調査45.5、23年1月調査46.1、2月調査48.4と推移している。なお、日銀短観は水準の調査なので、景気ウォッチャー調査の方向性の現状判断DIではなく、参考データの現状水準判断DIの方を重視した。

 

●日銀短観の中小企業・製造業の業況判断DIが▲6程度と予測通りなら、12月調査の「先行き見通し」の▲5より1ポイント低い水準で、事前の見通しより悪かったことになろう。また中小企業・非製造業が+7程度と予測通りなら、12月調査の「先行き見通し」の▲1より8ポイント高い水準で、事前の見通しよりはかなり良かったことを意味しよう。

 

●日銀短観の中小企業・業況判断DIの6月までの「先行き見通し」は、製造業で3月実績比3ポイント改善の▲3程度、一方、非製造業は3月実績比6ポイント悪化の+1程度と予測した。中小企業・非製造業では先行きをいつも慎重にみる傾向があるというクセを考慮した。

 

●日銀短観の設備投資計画の予測には、他の設備投資計画調査である法人企業景気予測調査、景気ウォッチャー調査から作成する設備投資DIや、過去の修正パターンなどを参考にしている。

 

●1~3月期の法人企業景気予測調査の2022年度の全産業・設備投資計画は前年度比+8.6%で10~12月期の+13.2%から4.6ポイント伸び率が鈍化している。

 

●景気ウォッチャー調査の設備投資関連・現状判断DIは、22年9月43.8(回答したウォッチャー4人)、10月51.1(同7人)、11月35.0(同5人)、12月45.8(同6人)、23年1月42.9(同7人)、2月41.7(同3人)と推移している。1月では「取引先の開発計画が後ろ倒しになっている印象を受ける。また、設備投資も後ろ倒しの流れがみられる。(東北:電気機械器具製造業〔企画担当〕)」というコメントがあった。

 

●一方、設備投資関連・先行き判断DIは22年9月55.6(回答したウォッチャー9人)、10月31.8(同11人)、11月25.0(同4人)、12月65.0(同10人)、23年1月50.0(同7人)、2月57.1(同7人)と推移している。2月では、「取引先が設備投資を積極的に行う状況になってきている。新型コロナウイルスの感染状況が終息しなくても、改めて設備投資を行う気運が全体的に高まっている。(東海:電気機械器具製造業〔経営者〕)」という前向きなコメントがあった。一方で、「企業への電気料金の値上げが4月から本格化するため、少なからず設備投資等への影響が考えられる。早期の解消は見込めないため、ややマイナス影響と予測している。(南関東・東京都:通信会社〔管理担当〕)」という慎重なコメントもあった。

 

●22年度の大企業・全産業の設備投資は前年度比+16.0%程度と予測した。12月調査の同+19.2%から増加率が鈍化すると予測した。

 

●22年度の中小企業・全産業の設備投資計画は前年度比+4.3%程度と、12月調査の同+3.8%から上方修正されると予測した。中小企業の設備投資は例年3月調査が弱く、その後は1年後の3月調査まで調査の度に改善していく傾向がある。今年度も3月調査は12月調査より改善するとみた。

 

●23年度の大企業・全産業の設備投資は前年度比+2.8%程度と予測した。また、中小企業・全産業の設備投資計画は前年度比▲17.0%程度と予測した。

 

 

(2023年3月23日)

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2023年3月調査「日銀短観」予測【エコノミストが解説】』を参照)。

 

 

宅森 昭吉

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

理事・チーフエコノミスト

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