(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

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実質GDP成長率は前期比年率+0.1%に第1次速報値+0.6%から下方修正

 

実質・前期比で民間住宅投資、公共投資、輸出は上方修正、個人消費が下方修正

 

法人企業統計受け、設備投資不変、在庫変動・名目前年比下方修正も実質前期比寄与度不変

 

10~12月期名目GDP560.6兆円、過去最高・19年7~9月期561.7兆円以来の水準

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●22年10~12月期実質GDP成長率・第2次速報値は前期比0.0%、前期比年率+0.1%となり、第1次速報値の前期比+0.2%、前期比年率+0.6%から下方修正となった。法人企業統計を受けて、民間設備投資は変わらず、民間在庫変動の名目前年同期比寄与度が+0.1%から▲0.0%へ予測通り下方修正されたが、実質前期比寄与度は▲0.5%で変わらなかった。実質・前期比では民間住宅投資、公共投資、輸出が上方修正されたが、個人消費の実質・前期比が第1次速報値の+0.5%から+0.3%に下方修正された影響が大きく、全体として下方修正になった。

 

●22年10~12月期名目GDPの季節調整値は560.61兆円で直近のボトムだった20年4~6月期の512.68兆円と比較すると47.92兆円高い水準になった。しかし、コロナ禍前の過去最高位だった19年7~9月期の561.73兆円には、まだ1.12兆円低い水準である。

 

●22年10~12月期の実質GDPの季節調整値は、546.74兆円である。コロナ禍でのピークだった、国内の新型コロナの感染者が初めて出た四半期の20年1~3月期の544.43兆円を2.31兆円上回った。発表の度に、実質値のコロナ禍前のピークが変わる傾向にあったが、今回は第一次速報値と同じ19年7~9月期のままだった。22年10~12月期は19年7~9月期の水準557.45兆円よりは10.72兆円低い。

 

●10~12月期名目GDP成長率・第2次速報値は前期比+1.2%、前期比年率+4.7%となり、第1次速報値の前期比+1.3%、前期比年率+5.2%から下方修正となった。

 

●10~12月期の実質個人消費・前期比は、第1次速報値の+0.5%の増加から前期比+0.3%の増加へと0.2ポイント下方修正となった。実質家計最終消費支出の前期比も第1次速報値の+0.5%の増加から前期比+0.3%の増加へと下方修正となった。

 

●実質国内家計最終消費支出の前期比は、第1次速報値の+0.8%の増加から前期比+0.6%の増加へと0.2ポイント下方修正となった。その内訳をみると、まんべんなく下方修正となっている。耐久財が第1次速報値の実質前期比+2.7%から第2次速報値で+2.4%へと下方修正された。半耐久財の前期比は▲2.1%で第1次速報値の▲1.6%から下方修正された。非耐久財は前期比▲0.4%で、第1次速報値の▲0.3%の減少から下方修正された。サービスの前期比は+1.2%で第1次速報値の+1.4%から下方修正となった。

 

●10~12月期の実質住宅投資は、前期比▲0.0%で第1次速報値の▲0.1%から上方修正となった。

 

●10~12月期の実質設備投資・前期比は▲0.5%で第1次速報値の▲0.5%と変わらなかった。設備投資は、第1次速報値段階で需要側推計値(仮置き値)+2.7%だった需要サイドの名目原系列前期比が法人企業統計等を踏まえて計算すると+2.4%と0.3ポイント縮小している。

 

●10~12月期民間在庫変動の実質・前期比寄与度は▲0.5%と第1次速報値の▲0.5%と変わらなかった。民間在庫変動の内訳をみると、製品在庫は前期比寄与度▲0.1%で第1次速報値▲0.1%と同じだった。流通品在庫は前期比寄与度▲0.3%で第1次速報値の▲0.0%から下方修正になった。法人企業統計を使って推計された原材料在庫前期比寄与度は仮置き値だった第1次速報値の▲0.3%と同じ▲0.1%になった。同じく仮置き値の仕掛品在庫前期比寄与度は第1次速報値では0.0%だったが第2次速報値では▲0.0%に僅かに下方修正となった。法人企業統計のデータが加わっても、民間在庫変動の実質・前期比寄与度は第1次速報値と変わらなかった。

 

●10~12月期実質政府最終消費支出は前期比+0.3%で第1次速報値の+0.3%と同じになった。また、10~12月期実質公共投資は第1次速報値の▲0.5%から▲0.3%に0.2ポイント上方修正となった。公的在庫変動の実質・前期比寄与度は▲0.0%で第1次速報値の▲0.0%と変わらなかった。公的需要全体の前期比寄与度0.0%で第1次速報値0.0%と同じになった。

 

●10~12月期の外需(純輸出)の前期比寄与度は第1次速報値の+0.3%から+0.4%に上方修正となった。実質輸出の前期比は+1.5%で第1次速報値の+1.4%から0.1ポイント上方修正となった。控除項目の実質輸入の前期比は▲0.4%で第1次速報値と変わらなかった。

 

●10~12月期のGDPデフレーターの前年同期比は+1.1%で第1次速報値の+1.1%から不変だった。国内需要デフレーターの前年同期比は+0.7%で第1次速報値の+0.7%とこちらも不変となった。

 

●10~12月期第1次速報値では民間在庫変動・名目原数値・前年同期比寄与度は+0.1%であった。この内訳に関しては、雰囲気しか教えてもらえないが、4項目中プラス寄与は3項目で、大きな方から仕掛品在庫、流通在庫、原材料在庫の順になっている。製品在庫だけがマイナス寄与であるということだ。第2次速報値では民間在庫変動・名目原数値・前年同期比寄与度は▲0.0%に0.1ポイント下方修正された。4項目中2項目がプラス寄与で、大きな方から原材料在庫、流通在庫の順になっているということだった。仕掛品在庫は第1次速報値プラス寄与から、第2次速報値ではマイナス寄与に下方修正となった。第2次速報値のマイナス寄与は、仕掛品在庫、製品在庫の2項目で、製品在庫の方が、マイナス寄与が大きい。

 

●ARIMAモデルにより内閣府が現時点での情報を使って算出・公表した、1~3月期の原材料在庫の季調済実質値前期差は▲1,253億円、仕掛品在庫の季調済実質値前期差は+1,264億円である。

 

●「令和5年度の政府経済見通し」の22年度実質GDP成長率・前年度比+1.7%を達成するには、22年度残り1四半期で前期比年率+8.5%(前期比+2.06%)が必要である。21年度から22年度へのゲタは+0.2%だ。なお、22年度残り1四半期が前期比0.0%だと22年度実質GDP成長率・前年度比は+1.1%に、前期比+1.0%だと22年度実質GDP成長率・前年度比は+1.4%になる。

 

 

(2023年3月9日)

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2022年10~12月期「実質GDP(第2次速報値)」について【エコノミストが解説】』を参照)。

 

 

宅森 昭吉

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

理事・チーフエコノミスト

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