(※画像はイメージです/PIXTA)

患者は何を理由に病院を選択しているでしょうか。医師の評判、家族や友人の推薦は重要な情報源だといいます。その一方で、結果として軽い病気であっても不安から、高度な検査や治療を求める傾向があるといいます。※本連載は杉本ゆかり氏の著書『患者インサイトを探る 継続受診行動を導く医療マーケティング』(千倉書房)の一部を抜粋し、再編集したものです。

大病院受診の目的は適切な治療への期待

(3)患者の意思決定に関するまとめ

 

第1に、医療機関選択に関する先行研究では、大病院思考の選択理由について、どのような状況下でも適切な治療を受けられることを期待して、受診していることが明らかになった。例えば、病気が重いと自己判断をした患者は、万が一のことを考えて病院を選択していた。

 

また、初診の場合、最新の治療技術への関心が、病院選択に有意な影響を与えていた。高齢者を対象とした研究でも、多くの病気を持つ場合の受診の利便性を考えて、病気ごとに医療機関を変更するリスクを軽減したり、受診の利便性を考えて病院を選択したりしていた。急激に症状が悪化することへの不安から、高齢者は高度な診断機能が整った大病院を選択することが推察される。

 

第2に、患者の治療の意思決定に関する先行研究では、生活習慣と性急性や選好の逆転などの認知バイアスは、糖尿病患者のセルフコントロールに影響を及ぼす結果となった。また、再発乳がん患者の治療リスクの研究では、強い期待感は、強い副作用の影響など総合的な治療リスクに対して楽観度を高く維持する要因となっていた。

 

強いプラス面にのみ注目した期待感は「心の支え」となり、強い副作用の可能性を示唆されてもなお、総合的な治療リスクへの楽観度が高く維持されていた。治療の選択では、情報を集めるほど不安が高まり、不安を低下させることができないことが指摘された。

 

田中(2008)は、意思決定プロセスについて、消費者の意思決定は「問題解決」の行為であるとみなしている。つまり、消費者の意思決定は目標に導かれ、問題を解決する過程であると考えることができる。

 

患者は、症状の改善や完治が最短で達成でき、抱える問題を解決するために意思決定を行っているが、場合によっては、認知バイアスにより合理的な意思決定ができないことも報告されている。受診先選択や継続受診行動においても、患者は合理的な意思決定ができないことが考えられることから、継続受診行動と情報処理の関係を探る必要がある。

 

 

杉本ゆかり
跡見学園女子大学兼任講師
群馬大学大学院非常勤講師
現代医療問題研究所所長

 

 

 

患者インサイトを探る 継続受診行動を導く医療マーケティング

患者インサイトを探る 継続受診行動を導く医療マーケティング

杉本 ゆかり

千倉書房

「患者インサイト」とは、患者が心の奥底で考えている本音であり、医療に関する意思決定である。この患者インサイトを明らかにすることで、患者への情報提供や情報収集など、患者との効果的なコミュニケーション理解できるよう…

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