「不当利得返還請求」と「損害賠償請求」の違い
さて、ここまで、不当利得返還請求と不法行為に基づく損害賠償請求について、わかりやすくするために不当利得返還請求だけ取り上げて説明をしてきました。
使い込みにおいて、「不当利得返還請求」と「不法行為に基づく損害賠償請求」はどこが違うのでしょうか。
使い込みの場合、証明することは、ほぼ同じです。①無断で、②おろしたことの2点を証明することとなります。
大きく異なるのは、消滅時効の点です。
不当利得返還請求の時効は、使い込みが2020年3月以前であれば、使い込みから10年となります。使い込みが2020年4月以降だと、使い込みから10年、使い込みを知ってから5年となります。
これに対し、不法行為に基づく損害賠償請求の時効は、使い込みから20年で、使い込みを知ったときから3年となっています。
どちらが得なのかはケースバイケースとなります。法律上は、得な方で請求してよいこととなっています。
2020年3月以前のケースでは、使い込みを知ってから3年経過してしまっていると、不法行為に基づく損害賠償請求は時効消滅していますが、使い込みから10年が経過していなければ不当利得返還請求は時効にかかっていないので、不当利得返還請求で返還を求めることができるということとなります。
逆に、2020年3月以前のケースで、使い込みから10年経過していると、不当利得返還請求は時効消滅していますが、20年経過前に発覚した場合、発覚してから3年以内であれば、不法行為に基づく損害賠償請求は時効にかかっていないので不法行為に基づく損害賠償請求はできることとなります。
最初にもお話しましたが、相続が発生してから使い込みが発覚する、という事例は少なくありません。使い込みを防ぐには、成年後見制度を利用する方法があります。
成年後見人には、将来相続人となる予定の方の同意があれば親族の誰かがなることが可能です。成年後見人は、裁判所に年1回の収支の報告義務があり、通帳のコピーも提出する必要があるので、使い込み防止になります。親族の誰かでは使い込みが心配だという場合には、中立の弁護士や司法書士が成年後見人になります。
※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。
高島 秀行
高島総合法律事務所
代表弁護士
2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】