居住目的で購入したマンションが以前風俗特殊営業で使用されていた場合、それは瑕疵(特定の売買契約においてその目的物に何らかの欠陥・不具合があることで、その品質や性能が損なわれている状態)にあたるのでしょうか。今回は、賃貸・不動産問題の知識と実務経験を備えた弁護士の北村亮典氏が、実際にあった裁判例をもとに解説します。※本記事は、北村亮典氏監修のHP「賃貸・不動産法律問題サポート弁護士相談室」掲載の記事・コラムを転載し、再作成したものです。
瑕疵に当たる場合の損害額はいくらか?
次に、瑕疵の存在による損害額について、裁判所は、
「本件居室については、上記の瑕疵により、対価的不均衡(減価)が生じているものと考えられる。本件居室の代金が2600万円であること、一審原告夫婦が被った精神的苦痛に伴う住み心地の悪さを解消するために諸費用を費やしたこと」
「他方、本件居室については、一審被告Y1により内装工事が実施されて上記営業の痕跡は外見上ほとんど残っていないとみられることなどの諸事情を勘案」し
「民事訴訟法二四八条により、上記減価による損害を100万円と認めるのが相当である。」
と判断しました。
なお、不動産仲介業者は、売主から、性風俗営業のことで前入居者が管理組合と訴訟沙汰になったことは聞いていたにも拘らず、これを買主に説明しなかったことについて、説明義務違反があるとして、上記損害100万円について売主と連帯して責任を負うと判断されました。
マンションの居室が風俗営業で利用されていた、という事実は、いわゆる「客観的な瑕疵」ではなく「主観的な瑕疵」に分類されるものとなりますが、このような主観的瑕疵を認めた上で、さらに主観的瑕疵の損害額についても判断したという点で参考になる事例です。
※この記事は、2019年12月2日時点の情報に基づいて書かれています。
北村 亮典
弁護士
こすぎ法律事務所
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大江・田中・大宅法律事務所
弁護士
慶應義塾大学大学院法務研究科卒業。神奈川県弁護士会に弁護士登録後、主に不動産・建築業の顧問業務を中心とする弁護士法人に所属し、2010年4月1日、川崎市武蔵小杉駅にこすぎ法律事務所を開設。2022年11月30日より大江・田中・大宅法律事務所に所属。
現在は、不動産取引に関わる紛争解決(借地、賃貸管理、建築トラブル)、不動産が関係する相続問題、個人・法人の倒産処理等に注力している。
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