(※写真はイメージです/PIXTA)

資産形成の手段として「不動産投資」を検討する人が増えています。書店では不動産投資に関する本が多く陳列され、インターネット上でも「年収●万円のサラリーマンでも成功できる」といった触れ込みで様々な手法が紹介されており、見ているうちに、簡単に財を成せる方法であるかのようにも思えてきます。しかし、投資に失敗している人が多数いることを忘れてはいけません。不動産投資のプロが、投資の成否を分ける決定的なポイントを解説します。

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「知識不足で始めた不動産投資」は失敗して当然

資産形成は山登りによく似ています。

 

私はよく、毎月1000万円の賃料収入ができれば、個人の不動産投資としては頂上に到達したも同然だといっています。それに比べると、月額収入100万円が3~4合目くらいでしょうか。

 

本業の収入が高いプレイヤー(投資家)は、最初からバスである程度高い所まで登って、そこから登山のスタートができます。

 

逆に、属性が高くないプレイヤーは麓の1~2合目からコツコツ自分の足で登っていかないといけません。また、冬山にサンダルで登ろうとする登山家がいないように、事前に十分な勉強と心構えをすることがとても大切です。

 

 

これまで私が見てきた不動産投資で失敗した人というのはだいたい、エビデンス偽造や知識不足で始めてしまった人がほとんどです。それはトレーニングもまったくせず、半そで短パンで富士山に挑んでしまったのと同じであり、失敗して当たり前です。

 

本当の意味で高い位置のゴールを目指すには、成し遂げるための気持ちと正しい装備、これが欠かせません。

失敗を回避するには、投資前の「目標設定」が重要

例えば、「野球がうまくなりたい」といった定性的な命題には、ゴールはありません。

 

しかし、「不動産投資でどれくらいの財を成したいか」は、金額の設定が可能です。毎月10万円のお小遣いが欲しい人と、年間賃料1億円欲しい人とでは、取るべき戦略は明確に違うというのは、感覚的にお分かりになると思います。

 

ここを明確化しないと、「俺もマンションオーナーかぁ」と浮かれながら変な区分マンションを買ってしまい、よくよく収支を叩いてみると毎月赤字、なんてことが起こります。お金が欲しくて不動産投資を始めているはずなのに、お金が毎月持ち出しになっているという、聞く人が聞いたら理解に苦しむような状況が日本のあちこちで起きています。

 

これは、物件購入を検討している途中で、目的が「資産を殖やすこと」から「物件を所有すること」にすり替わってしまっているか、あるいはそもそも「月にXX万円得るためにこれは最適な手段か」を検討しなかったから起きてしまうことです。

 

皆さんがまず不動産投資で成功したいと思ったら、どれだけのスパンで、どのようなリスクの範囲で、どのようなリターンを得たいのか。まずこれを輪郭だけでいいので確定させましょう。そこまで固めたら、自然と「失敗したくない」と思うはずです。そこまでくればあとは具体的な道を探すだけなので、そうそう大きく踏みはずすことはないでしょう。

 

「節税のために不動産投資」の落とし穴

上場企業のサラリーマンや公務員をターゲットにした区分ワンルームの売り文句として「節税」がよくうたわれます。

 

でも、帳簿をつけると、正しい意味での節税になっていないことが多いです。というのも、経費として現金を支出したら、本来、手元にお金を残したいがための節税にもかかわらず、結果的に何もしなかったときより現金は減っているからです。嘘だと思う方は、きちんと帳簿をつけてみれば分かることです。

 

一番の原因は、耐用年数が長い物件では減価償却費を大きく計上できないところにあります。不動産所得は帳簿上では赤字、でもキャッシュフローは黒字という状態をつくれないと節税としては意味がないのです。

 

雰囲気に酔いしれたいだけなら話は別ですが、あくまで投資は「お金を手元に残す手段」に過ぎません。であれば、その目的に即したものを利用するべきでしょう。

1棟目で限界…サラリーマンの融資上限の現実

少し不動産投資における「融資」の深いところのお話をします。

 

よく当社にご相談いただく方に「1棟目は買えたが2棟目の融資をどこからも断られる」というパターンがあります。

 

共通した特徴としては、アベノミクス期に物件を買った人が多いです。当時は融資がジャブジャブだったので、「融資は簡単、自分の属性なら物件は買えて当たり前」というマインドセットになってしまっていることがほとんどでした。

 

サラリーマンの融資上限は一般的に年収の10倍とされ、そこまでは物件評価も重要ですが、審査の緩かった時期には正直、属性ありきの融資もまかり通っていたのです。

 

また、当時、都心1棟ものの利回りは4~5%、郊外でも7%程度が当たり前だったので、単体収支が伸びないということもあります。

 

アパート・マンションは1棟買うと1億円近い借入が発生することもまったく珍しくありません。そして1棟買ったあとには属性審査の基準から見て上限に達してしまい、また事業として見てもキャッシュが回っていないので融資先として不適格で融資が出なくなるのです。

 

一般的な買い物と違い、収益不動産の購入において、金融機関からの借入はセットです。筆者は一般レベルから脱却して無限に買い続ける方法を解説していますが、まず覚えてほしいことは「普通の買い方ではサラリーマンの収入を超えるのは難しい。なぜなら融資上限に引っかかるから。加えて、金融機関が次も貸したいと思える買い方を知っていないと、次の融資は出ない」という点です。

もはや「1法人1物件スキーム」は通用しない手法

数年前の融資が簡単に出ていた頃、個人としての融資上限をクリアして物件を買い進めるために、1法人1物件スキームというのが流行りました。これは審査を潜り抜けることを目的とした“グレー”なやり方です。

 

通常、1人の投資家が複数の収益不動産を購入する場合、どの金融機関からそれぞれいくら借りているのかは各金融機関に通知する必要があります。

 

しかし、1法人1物件スキームは、複数の法人を“隠れ蓑”にすることで、ほかからいくら借入しているのかを知られることなく、複数の金融機関からローンを引っ張ろうとするものです。

 

金融機関では近年、この手法を問題視するようになり、独自にチェックするところもあるようです。もし発覚すれば金融機関との信頼関係が崩れ、新たな借入は難しくなります。また、悪質だと判断された場合は、既存の融資の一括返済を求められる可能性もないとはいえません。

 

実際、1法人1物件スキームで投資用不動産を買い進めたいわゆるギガ大家のなかには、新規の融資を申し込んでも通らなくなっていることが多いと聞きます。

 

そもそも1法人1物件スキームは、法人がいくつもあるので維持経費などがかさみます。トータルの借入額のわりにキャッシュの手残りは少なく、投資としては失敗というケースも決して少なくありません。

 

現在、このスキームは金融機関のチェックが厳しく、使えないと思ってください。裏技的な急拡大の方法は、商売の王道ともはずれます。事業者として正攻法で規模拡大をする方法はきちんとありますので、このスキームを利用する線は前提として消してください。

 

 

穴澤 勇人

コスモバンク株式会社 代表取締役

 

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※本連載は、穴澤勇人氏の著書『税制と収益不動産をフル活用した資産形成』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

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穴澤 勇人

幻冬舎メディアコンサルティング

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