(※写真はイメージです/PIXTA)

「老後2000万円問題」が取り沙汰されて以降、資産形成の手段として「投資」に取り組む日本人が増えています。中でも、サラリーマンの副業として根強い人気を誇るのが「不動産投資」。お小遣い稼ぎはもちろんのこと、「年金代わりになる」などの誘い文句に惹かれ、これから始めようと考えている人もいるでしょう。しかし、サラリーマン大家の現実を見てみると…。

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日本人が投資で失敗するワケは「知識不足」

今回のコロナショックもそうですが、世の中はどんどん変化し、不確実になってきています。それゆえ、「お金」に対する関心が高まっているように感じます。

 

ところが、日本の学校で決して教えてくれないのが、お金に関わる知識です。多くの日本人は、税金、年金などについて、分からないものはなんとなく分からないままにして日々を過ごしがちです。

 

その結果、ちょっと世相不安なニュースが出たり、なんとなく好景気を感じたら、十分なリテラシーがないままに急に投資をやり始め、失敗してしまいます。30年ぶりに日経平均が3万円を超えた今回の株高でも、同じことになるのではないかと心配です。

 

これは日本の教育制度上、仕方ないことではありますが、「投資」についてあらためて勉強するのはいつの時代であっても重要です。

 

そもそも、皆さんは経済的な意味で目標を立てたことはありますか。なんとなく「金持ちになりたい」とは口にしても、その目標に対して実際に行動を起こしている人はほとんど見たことがありません。

 

また、今さら説明するまでもありませんが、ノーリスクでリターンを得ることはできません。

 

自分が背負えるリスク、そのうえで目指したい目標値、こういったものをまず明確にしていただき、行動指針に据えてください。不動産投資を含め、すべての投資はそこから始まります。

 

認識が甘い…「副業感覚の不動産投資」は失敗して当然

皆さん、中途半端になんとなくの副業感覚で不動産投資をやるから失敗するのです。そして、小遣い稼ぎのはずの副業で損失が出るから「やらなきゃよかった」と嘆いていらっしゃいます。

 

私からしてみれば、それは単純に稼ぐということを甘く見過ぎているだけです。

 

不動産投資は基本的に、「不動産賃貸業」です。アパートや賃貸マンションなど収益不動産を取得し、それを人に貸して賃料収入を得るビジネスです。

 

不動産賃貸業の大きな特長は、ほかの業種に比べると経営センスが問われにくく、きちんと方法を選べば成功できる可能性が高いということです。

 

しかし、そのためには、ラクな副業としてとらえるのではなく、自分は「不動産賃貸業を営む経営者なんだ」というマインドセットが欠かせません。

 

不動産賃貸業は昔から「大家業」と呼ばれてきました。人に生活の基盤である住居を提供する仕事です。その対価を報酬として得るからには、事業者として向き合う覚悟がなければなりません。

 

経営者として本当の意味で真剣になれば、結果として経済的に自由になることも、十分できるでしょう。

その不動産投資、「資産を殖やす手段」として適切?

30年ほど前から、個人の不動産投資で主流になってきたのが、区分マンションの購入です。特に区分ワンルームを販売する業者の宣伝では、「年金代わり」「資産形成」「憧れのマンションオーナー」など、耳ざわりの良いフレーズが今なお跋扈しています。

 

その宣伝文句を鵜呑みにして、公務員や上場企業のサラリーマンなど、いわゆる優秀な人たちが区分ワンルームをどんどん買っています。しかし、その多くは、単体では収支が回らなかったり、あるいは投資金額に対して収入が非常に小さかったりするものばかりです。

 

例えば、毎月3000円の収入を得るために、2000万円のローンを平気で組んでしまうのです。少額であっても黒字ならまだしも、管理費・修繕積立金まで含めると毎月手出しがある人すらいます。

 

当然ながら1戸単位での投資なので、退去があったらしばらく収入はゼロです。物件数を拡大しようとしても、2~3戸で融資上限になるので規模の勝負もできません。また、「想像より儲からないから売ろう」と思っても、不動産には株式ほどの流動性はありません。売り出してから決済まで2ヵ月くらいは平気でかかります。しかも、仲介手数料などの諸経費もかかります。

 

こうして、途方に暮れながら現金を垂れ流しつつ、保有を続けることになるわけです。

 

これは結局のところ「分からないことを分からないまま、なんとなく言われるがままエイヤで買っちゃう」からダメなのです。一般に頭が良いといわれる人ほど、そういう傾向があるので不思議です。

今後「区分ワンルーム」は“負”動産化の一途

区分マンションの商品特性としてのリスクは先述のとおりですが、2000年代初頭に建築された特にワンルームは、これからどんどん賃料が下落していくでしょう。

 

しかも、主なターゲットである独身者の所得格差が当時より広がっており、住居にかける費用は「超高級」か「1円でも安く」かの傾向がどんどん強まっています。

 

インターネットが普及し、物件探しが容易になったのも原因の一つです。都心部でもターミナル駅から3~4駅離れれば月3~4万円台のアパートも出てきており、築20年で設備が陳腐化しつつある、中途半端に賃料の高い区分ワンルームの競争力低下は免れないでしょう。

 

新築時には毎月10万円の想定だったものが、今では価格勝負で7万円でも決まりにくくなってしまった、そんなことが不思議ではない時代が来たのです。

 

あるいは、数百万円をかけて本当に設備をすべて入れ替えるという選択肢もあると思いますが、どう転んでも苦しい状況なのは一目瞭然です。

 

結局のところ、資産価値の大幅な下落か、収益とまったくバランスしないほどの大規模な出費か、これらがほぼ必然として起きてしまうということです。

資産状況に応じて「選ぶべき物件」が変化

区分ワンルームの危機について語りましたが、実際のところ、区分ワンルームでも成功する方法はあります。ただし、そのためには本人の金融資産の状況が重要で、いわゆる「もう資産形成が終わっているお金持ち」なら、という条件付きです。

 

実際のところ、これから不動産投資を始めたいという投資初期段階にある方で、潤沢にキャッシュをもっているという人は少ないと思います。

 

そういった方の場合、耐用年数切れの木造や軽量鉄骨造の中古アパートから始めるのがいちばん良いケースがほとんどです。

 

耐用年数切れの中古アパートのメリットは大きく3点あります。

 

①減価償却費を最短で取れるため、帳簿上の赤字を意図的につくりやすい(売買契約書で建物金額を明記するのが重要)

 

②すでに家賃下落が完了しているので、賃料の値崩れリスクが低い

 

③ほかの投資商品と比べ、相対的に高利回りで購入しやすい

 

ほかにも1棟ものは1戸ではなく複数の住戸がある前提のため、1つ解約が発生しても残りの住戸からは賃料を生み出し続けられるなど退去リスクに強かったり、リフォーム済みであれば修繕費用が少額で済みやすいなどのメリットがあります。

 

まずは「耐用年数切れの中古1棟アパート」が、不動産投資の初期においては最も効率の良い“キャッシュマシーン”だということだけ覚えておいてください。


 

穴澤 勇人

コスモバンク株式会社 代表取締役

 

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※本連載は、穴澤勇人氏の著書『税制と収益不動産をフル活用した資産形成』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

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穴澤 勇人

幻冬舎メディアコンサルティング

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