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「融資が出るから、とりあえず買う」の危険性
よく当社にご相談いただく方に「1棟目は買えたが2棟目の融資をどこからも断られる」というパターンがあります。
共通した特徴としては、アベノミクス期に物件を買った人が多いです。当時は融資がジャブジャブだったので、「融資は簡単、自分の属性なら物件は買えて当たり前」というマインドセットになってしまっていることがほとんどでした。
一般的な買い物と違い、収益不動産の購入において、金融機関からの借入はセットです。筆者は一般レベルから脱却して無限に買い続ける方法を解説していますが、まず覚えてほしいことは「普通の買い方ではサラリーマンの収入を超えるのは難しい。なぜなら融資上限に引っかかるから。加えて、金融機関が次も貸したいと思える買い方を知っていないと、次の融資は出ない」という点です。
融資上限に引っかかるともう規模拡大ができない、というのは「融資が出るからとりあえず買う」というスタートの仕方をした人に非常に多く見られる傾向です。
不動産投資はその特性として、土地、建物という実物が残るので、たとえ失敗しても投資額がゼロになることはほとんどあり得ませんが、やはり株式などと比べると流動性は低めになっています。買主が見つかっても引き渡しまで2ヵ月程度は平気でかかります。
また、アベノミクス期は普段なかなか融資が難しい、郊外の大型物件にも流動性が生まれた特異な期間でした。そういう物件の出口は、購入時ほどスムーズにはいきません。
不動産賃貸業は、動かすお金が巨大です。その分、事業を拡大して安定性を増していくのが基本戦術になりますが、拡大がもうできないオーナーは、大きな損切りをして撤退するか、じっと残債がなくなるまで耐え忍ぶか、二つに一つです。
「思ったほどうまくいかない、だからやめる」といった軽い判断はできません。大きな出血を伴っても良いなら話は別ですが。なので、これから物件を買う方は「買えるから買う」はやめていただきたいです。
高利回りでも、最終的に売却できなければ「負動産」
不動産投資の世界では、物件の利回りにばかり注目する人を「利回り星人」と呼んでいます。
しかし、不動産投資は、最終的に現金化をしてゴールです。いくら利回り20%でも、売却できない不動産は、いずれ人に貸せない状態になったら最終的には延々と固定資産税を垂れ流すだけの負債になります。
もちろん、自分で再建築したり、そもそも投下資金の何倍もの資金を回収できれば問題ありません。「持ち続ける」というのも、実は出口戦略の一つなのです。
ただし、現在の日本の法律上、不動産の所有権放棄は事実上できず、また相続人が一人でもいれば、たとえ相続放棄をしようとも、相続財産管理人の選任までは管理義務が生じます。「自分が死んだら関係ないでしょ」とはいかないのです。
売却できない不動産を所有していると、「永遠に事業撤退ができない」状態になります。数十年、あるいは自分の死後までその状態が固定されるのは、身軽さの面からいってもあまり推奨はできません。
「再建築不可」「市街化調整区域」「そもそも賃貸需要がないエリア」などの超高利回り物件を選ぶのも一概に否定はしませんが、自分が買えたからといって次の買い手がつくかは分かりません。
目先の利回り20%は、本当に一族郎党皆を巻き込んでまで投資する価値があるかどうか、本当に事業をきれいに終えることができそうな物件か、よく検討されることをおすすめします。
最初に投資するなら「中古1棟木造アパート」が適切
従来の不動産投資についてネガティブな面に触れてきましたが、結局のところ不動産投資で成功するために大事なことは次の2点に尽きます。
①手元の現金が殖える(手出し前提の投資は初期段階ではだめ)
②最終的に売却で出口戦略が取れる
減価償却の側面も鑑みて、私は投資スタート段階の方の場合は「中古1棟木造アパート」の活用が一番であると結論づけております。
資産性が非常に高い、例えば都心物件では利回りが確保できません。逆に、超高利回り物件はそれそのものが何かしらのリスクを抱えているので、簡単に撤退できないこともあります。
これらのバランスが取れるのが、エリアを選んでの中古1棟木造アパート投資です。仮に上物がボロボロでも、アパートには土地が付いてきますので、資産価値の担保を成しやすいのが特長です。戸建て住宅の需要があるエリアなら、最悪、更地にして路線価より少し安いくらいまで下げれば建売業者が買います。
「高利回りだから」「都心部だから」といった一面的なところだけにフォーカスして投資に踏み切ると、「こんなはずじゃなかった」となってしまうことが少なくありません。
ある程度、賃料収入が貯まったところ、あるいは税率が得になるタイミングで売却し、殖えた資金をさらに大きく投下することで規模を拡大していく、というのが不動産収入を殖やす王道です。それを実現するために、最初に何を買うかが極めて重要なのです。
穴澤 勇人
コスモバンク株式会社 代表取締役
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