(※画像はイメージです/PIXTA)

人はたとえ「ひとりぼっち」だったとしても、疎外されていると感じなければ、「疎外感」は覚えません。「孤独」が即座に疎外感を生み出すわけではありません。どうしたら孤独に飲み込まれないようになるのでしょうか。※本連載は精神科医である和田秀樹氏の著書『孤独と上手につきあう9つの習慣』(大和書房)から一部を抜粋し、再編集したものです。

孤独が即座に疎外感を生み出すわけではない

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「孤独」と「疎外感」の違いとは?

 

これまで私は、「孤独」という言葉と「疎外感」という言葉をいっしょくたにして語ってきました。

 

孤独とは、言葉のとおり「ひとりぼっち」ということです。

 

疎外感というのは、周囲から疎まれているとか、集団に排除されているとか、仲間に溶け込めないときなどに感じる感情を指します。孤独と同じく「ひとりぼっち」であることによって意識する感情ですから、孤独と疎外感はほぼ同じ意味だと言えるでしょう。

 

しかし、厳密にいえば両者には多少の違いがあるように思います。というか、私は多少の区別を持ちたいと思っています。

 

なぜなら、人はたとえ「孤独」「ひとりぼっち」だったとしても、疎外されていると感じなければ、「疎外感」は覚えないからです。「孤独」が即座に疎外感を生み出すわけではありません。

 

これは当たり前のようですが、意外と重要な視点です。

 

「なんとなく周囲から浮いているな」
「自分はひとりぼっちだ」

 

と思ったとしても、それを恥じたり、受け入れてくれない周囲を恨めしく思ったりしなければ、人は疎外感というものを感じることはない。その事実を事実として、淡々と受け止めることができます。

 

そうすると、「孤独には孤独のよさがある、自分が自分でいるためには、多少の孤独は甘んじて受け入れなければならないんだ」というひらきなおりの境地に達します。

 

このひらきなおりの境地があってこそ、自分を客観的に捉えて、自分自身の孤独について思いを巡らすことができるのです。

 

しかし、孤独であることに疎外感しか感じられない場合、やはり人は自分の孤独からは目を背けたくなるでしょう。

 

孤独を覆い隠してくれるツールに耽溺したり、「みんなと同じ」になって防衛しようとしてしまう。

 

たとえば、かつてひとり暮らしの高齢者や独身者の慰めとなったのはテレビでした。1日中テレビを付けっぱなしにしている人も珍しくはありませんでした。テレビから流れてくる人の声を聴くことで、「自分は一人じゃない」と感じられるからです。お年寄りには今でもそういう人が多いかもしれません。

 

現代でそれと同じような役割を果たしてくれるのはSNSです。SNSに投稿すれば、それを見た人から何らかのレスポンスが返ってきます。それによって「自分は一人じゃない」と感じられる。

 

しかし、テレビは言うまでもありませんが、SNSでも、血の通い合ったコミュニケーションというのは稀です。というのも、SNSは個人的な悩みを相談したり、人と違う意見を主張したりする場になりにくいからです。

 

風変りな詩を書いたときに、SNSでそれを発表して「どう?」と聞く人は少ないでしょう。親友になら自分をさらけ出す勇気を持てたとしても、SNSで不特定多数の人に自分の内面をさらけ出す勇気はなかなか持てません。その勇気が持てれば、SNSも深くわかり合える相手を見つけるツールになり得ると思いますが、不特定多数に見られる場だと思うと、勇気のハードルが上がってしまうのです。

 

そうなると、投稿するのは多数派の意見、予定調和の意見、毒にも薬にもならないマイルドなコメント、批判されにくい内容になります。すると、返ってくるレスポンスも定型的なものにならざるを得ない。つまり、表面的なやり取りに終始しがちで、自分のことを深く深く理解してくれるような人と知り合える確率は低いということです。

 

フォロワー数が増えた、減ったと一喜一憂するのは、孤独から目をそらす効果はあるかもしれませんが、それはあくまでも覆い隠しているだけ。そこに耽溺していては、孤独と向き合って考えることはできません。

 

あなたが「あなたらしさ」を確立するためには、まず孤独と向き合うだけの強さを身に付けなければならないのです。

 

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孤独と上手につきあう9つの習慣

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