心臓病の妹は産声を上げなかった
「心臓病だった双子の妹を羨ましいと思っていた」
そう話し始めたのは都内在住の佐野若菜さん。
彼女は12歳の頃、双子の妹である紗菜さんを心臓病で亡くしました。
あまりにも若くして亡くなってしまった双子の妹に対し、「羨ましかった」と語る若菜さん。
彼女が当時、一体何を想っていたのか、今回話していただきました。
若菜さんと紗菜さんが生まれたのは今から25年前のこと。台風の接近でいつ停電するか分からない、そんな最中生まれたのだといいます。
「母は私たちを帝王切開で生みました。だから、母は手術台の上で、『今停電したらこの子たちはどうなるのか、不安で全然出産に集中できなかった』と言っていました。生まれる時からすでに波乱万丈でしたね……」
母親の心配をよそに、元気な産声を上げた小さな命。
ただ、その産声が2つ聞こえることはなかったそう―――
弱々しく生まれた妹の紗菜さんは、心臓病を抱えていたのです。
「妹が心臓病であることは、生まれる前の検診の時点で分かっていたそうです。いわゆる先天性の心疾患。しかも妹の場合、その度合いは重度。生まれてすぐ手術しないと3日ともたない病気でした」
幼い身体で4回の手術に耐えた妹と家族の苦しみ
妹・紗菜さんは、生後4日目で1度目の手術、そしてその後、3歳までに4回の手術を受けたといいます。
「妹本人にとってはもちろん、両親にとっても本当に過酷な数年間でした。私は小さかったので正直あまり覚えていません。ただ、妹は常に入院していて家にはいなくて、そこに母も付き添っていたので、私が母に会えるのは父と交代する土日のみ。やはり寂しい思いをしていたことだけは覚えています」
紗菜さんは複数回にわたる手術を受け、なんとか命の危機を脱することができたといいます。そして、2人が小学校に上がる頃には、紗菜さんもたまに通学できるほどの病状にまで回復していたのだとか。
「小学校に入ってからしばらくは、妹の病状は落ち着いていました。学校には月に2、3回しか行けていませんでしたけど、一緒に学校へ行ける日は、父も母も妹もみんな笑顔で、すごく嬉しかったですね」