(※写真はイメージです/PIXTA)

「看板」は店の広告手段の一つですが、「集客」を目的とせずに使用することもあります。どんな目的で設置されているのか? 看板製作会社「有限会社オチスタジオ」の代表・越智一治氏が、マーケティングの視点から見た看板について解説していきます。

看板を「街全体の価値」向上に繋げられるワケ

札幌のススキノが分かりやすい例です。札幌を訪れる人が、飲み、食い、遊びのためにススキノを訪れるのは、ススキノの街が広く認知されているためです。

 

ススキノはきらびやかな看板がひしめいています。各店舗が掲げる大小さまざまな看板が合わさることで、街全体の活気を生み、華やかな雰囲気を醸成しています。この雰囲気がススキノの認知度を高めている大きな要因です。

 

新宿の歌舞伎町や大阪のミナミも同じです。海外では、米国ニューヨークのタイムズスクエアは世界でも指折りの華やかなエリアですし、香港の九龍も同様に、各店舗が競うようにしてネイザンロードにネオン看板を掲げることで、お祭のような雰囲気をつくり上げています。

 

現地を訪れる人の「この街に行けば楽しめる」「いつか行ってみたい」といった気持ちを刺激するのは、雑多な看板が街の景観をつくり出しているからです。

 

同時に、街に人が集まることによって看板を掲げている店の集客率も高くなります。繁華街など活気が重要な地域では店と街が共存関係にあるということです。看板にお金をかけ、それが売上として戻ってくるという良いサイクルが生まれています。

 

見方を変えると、活気が乏しく、寂れて見える街は、繁華街全体として看板活用のマーケティングが機能していないということでもあります。

 

余談ですが、若い頃にまちづくりを主観とした若手経営者の会に在籍していたことがありました。

 

そのときに感じたのは、地方自治体主導のまちづくりなどはヨーロッパの街並みを目指す傾向にあり、看板が少なくなりやすいということです。

 

コンセプトとしては決して悪くありません。石造りの建物や石畳の道路は上品な雰囲気を演出しますし、看板を減らすことによって雑多な雰囲気を抑えれば、イタリアのミラノやスペインのバルセロナに来たような感覚になります。

 

しかし、観光地であればそれも良いのですが、実際に住むと寒々とした印象になります。日本人を含むアジア人は、全体的な傾向として看板などがたくさんある雑多な雰囲気に活気を感じ取るため、それが抑えられることによって寂しい街並みになってしまうのです。

次ページ新宿区のまちづくり戦略「歌舞伎町の看板を派手に」

※本連載は、越智一治氏の著書『看板マーケティング戦略』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

看板マーケティング戦略

看板マーケティング戦略

越智 一治

幻冬舎メディアコンサルティング

ピーター・ドラッカーは、マーケティングの理想は「販売を不要にすること」であると言いました。 つまり、営業マンが売り込みに走り回らなくても、商品やサービスが「自ずから売れるようにすること」が究極のマーケティングだ…

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