(※写真はイメージです/PIXTA)

「看板」は店の広告手段の一つですが、「集客」を目的とせずに使用することもあります。どんな目的で設置されているのか? 看板製作会社「有限会社オチスタジオ」の代表・越智一治氏が、マーケティングの視点から見た看板について解説していきます。

新宿区のまちづくり戦略「歌舞伎町の看板を派手に」

集客のための看板活用は、目立つことや、道行く人の目に留まりやすくすることが基本です。

 

例えば、東京都新宿区の景観形成ガイドラインを見ると、歌舞伎町エリアでの屋外広告物に関する景観形成ガイドラインとして、看板など建築物全体で光を演出する、夜間は看板で光溢れるにぎわいをつくるといったことが書かれています。

 

歌舞伎町の看板が派手で華やかなのは、各店舗が「目立たせよう」と努力していることが大きな理由ですが、その根底には新宿区のまちづくり戦略として、看板を街の活性化に活かそうとするマーケティング戦略があるのです。

 

一方で、街全体の価値向上という点では、あえて目立たないようにすることや街全体として派手な看板を規制することが、街の価値向上に結び付くケースもあります。新宿区内には神楽坂のような落ちついた雰囲気の地域もあり、ここでは歌舞伎町とは対照的なガイドラインが設けられています。

 

ガイドラインの一例を挙げると、車や電車から見える中層部や高層部の看板は彩度を抑えて余白を多く取る、ビジョン広告やいわゆる画面がデジタルになっているデジタルサイネージの看板は避ける、ビルの壁面の看板は必要最小限の大きさにする、といったことです。

 

看板規制では、景観保護を重視する京都市の景観条例も有名です。条例に従って、京都市ではマクドナルドの看板は鮮やかな赤ではなく茶色がかった地色に変更され、オレンジが目立つ吉野家やすき家の看板も白地の看板に変更されています。

 

特に規制されるのが、赤、オレンジ、黄色の看板です。赤系はマクドナルドのほかにも多くの飲食店で使われる色ですが、京都では不二家やガストなどは白地になり、ユニクロやワイモバイルなどは茶色系の地色になっています。

 

石川県金沢市や兵庫県神戸市なども景観に厳しい街として知られています。看板規制を含む景観コントロールを始めたのが金沢市であり、初めて都市景観条例を作ったのは神戸市といわれています。

 

金沢市では、屋根や外壁に掲げる看板の基調色として、「赤や黄赤系の色相で彩度6以下」「黄系の色相は彩度4以下」といった細かな規定を作っています。彩度とは色の鮮やかさのことで、彩度が高くなるほど色合いは派手になります。そこに規制をかけることにより、街全体の景観を落ちついた雰囲気にすることが景観条例を作る意図です。

次ページ看板は地味になるのに「集客力が上がる」戦略

※本連載は、越智一治氏の著書『看板マーケティング戦略』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

看板マーケティング戦略

看板マーケティング戦略

越智 一治

幻冬舎メディアコンサルティング

ピーター・ドラッカーは、マーケティングの理想は「販売を不要にすること」であると言いました。 つまり、営業マンが売り込みに走り回らなくても、商品やサービスが「自ずから売れるようにすること」が究極のマーケティングだ…

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