(※写真はイメージです/PIXTA)

精神科ユーザー、高校中退、29歳まではバレエ教師という医師としては異色の経歴をもつ、医療法人瑞枝会クリニック院長・小椋哲氏。研修医時代から、精神医療現場の「短時間の画一的な診療」に疑問を抱き、積極的に患者の抱える問題に介入する「対人援助」を意識していました。しかし診療の質を確保しながら数をこなすことを求められる日々に、疲れ切ってもいたといいます。

副業状態の「週末格安カウンセリング」を止め新しく…

こうして、勤務していたクリニックと、自身のカウンセリングオフィスの両輪で診察を重ね、彼女のような患者に向き合う日々を、1年と8ヵ月続けました。

 

そこでは、健康保険の枠組みで強いられる短時間診療から一歩踏み込み、カウンセリングを経て患者が改善していく例をいくつも目の当たりにすることができました。

 

この経験から多くの臨床現場で日々繰り返されている時間に追われるばかりの診療だけでは患者を救いきれないことを実感しました。そして、保険診療であっても、もっと患者と時間をかけて向き合い、患者固有のボトルネックを徹底的に追求し、それに噛み合う対人援助を提供し、患者自身にそれを解消する力を身につけてもらう必要があると確信しました。

 

カウンセリングオフィスでは、試験的に自費診療で週に半日だけ、格安料金でカウンセリングを行ってきましたが、これでは経費を賄うのが精いっぱいです。その意味ではボランティア状態でした。

 

平日をフルタイムで勤務したうえでの週末のカウンセリングだったので、私の体力上、これ以上、開所時間を増やすことは、現実的ではありませんでした。

 

しかし、単純に値上げをするだけでは、医療を受けられるのは経済的な余裕のある人に限られ、本当に必要としている人に届かない可能性があります。健康保険の枠組みのなかで十分な診療時間と、質の高い対人援助を担保するという目標から逃げるわけにはいきませんでした。

 

ただ、一介の勤務医の立場で新しい診療モデルに挑むなど、勤めている病院の体制を変えることには限界があります。

 

そこで2016年12月、私は勤務していた病院を退職し、副業状態だったカウンセリングオフィスとは別に、保険診療を行うクリニックを設立しました。

 

自らのクリニックで、診察がボランティア状態になることなく、経営が圧迫されることもなく、健康保険を活用して患者に十分な診察の時間と質の高い対人援助を実現するための枠組み作りの実験が始まりました。そしてたどり着いたのが、こうしたすべての課題を解決する独自の診療モデルの確立だったのです。

 

 

小椋 哲

医療法人瑞枝会クリニック 院長

※本連載は、小椋哲氏の著書『医師を疲弊させない!精神医療革命』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

医師を疲弊させない!精神医療革命

医師を疲弊させない!精神医療革命

小椋 哲

幻冬舎メディアコンサルティング

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