(※写真はイメージです/PIXTA)

コロナ禍でうつ病になってしまった41歳・会社員のAさん。初めに受診した精神科で思うような治療の効果が得られず、セカンドオピニオンを探して、医療法人瑞枝会クリニック院長・小椋哲氏のもとへやってきました。「Aさんのうつ」の根本的な原因として考えられることを、同氏が詳しく解説します。

41歳エリート会社員、コロナうつ?通院しても効果が…

Aさん 41歳男性、会社員

 

主訴:朝起きられない、出勤できない

 

生活歴:弁護士の父、実業家の母の長男として生まれる。妹あり。有名大学卒業後、大手企業に新卒入社、同期のなかでも比較的早く課長に昇進。妻、長男(7歳)、長女(5歳)との4人暮らし

 

病歴:順調に昇進はしてきたが、新しいポストに就いたとたんにコロナ禍で前例のない対応を求められる日々が続いたことで心身ともに疲弊。2020年6月頃から集中力低下、食欲低下、体重低下、全身の倦怠感。

 

同年8月に出勤困難となり欠勤が続き、両親の勧めで心療内科を受診。うつ病と診断された。毎日、昼前にようやく起き出すが、外出はおろか入浴もおっくう。終日ボーッとテレビを見る生活が続く。

 

治療経過:休職が必要との診断書を発行し、自宅療養に。抗うつ薬を処方。効果が見られないため副作用チェックのうえ増量するが効果なし。

 

両親の勧めもあり、カウンセリングを希望。9月から2週間に1回、臨床心理士による50分カウンセリングを受ける。

 

「職場に申し訳ない」という罪悪感が強く、マイナス思考に対する認知行動療法とマインドフルネス瞑想のレーズンエクササイズを実施するが、こちらも効果が見られない。

正しいボトルネック解消ができていない!問題はどこに

前医の紹介状からこれまでの経過をざっと確認した結果、前の病院ではAさんの回復を妨げているボトルネックの把握やその解消のための介入ができていないと考えました。

 

確かに、昇進に加えて、コロナ禍での前例のない対応と繁忙という職場のストレスが、うつ病の発症の直接のきっかけであったことは間違いないようです。その職場環境に身を置いたままでは、うつ病は悪化の一途をたどります。

 

つまり、その職場環境がボトルネックであり、そのストレスを取り除くための休職と自宅療養は妥当な介入だったと考えられます。また重症度からいって、抗うつ薬の投与自体もスタンダードな治療です。

 

しかし、休職と投薬だけで良くなるほど患者の状態は単純ではありませんでした。

 

こうした職場のストレスは、患者がもともと抱えていた問題が表面化するきっかけになったに過ぎず、その背景には別のボトルネックが影響している可能性があります。そこまで踏み込んだ援助を提供しなければ、仮に短期的に症状が軽快してもすぐに再発するおそれがあります。Aさんの場合、仮に休職と投薬で回復して復職しても、すぐ再休職となる可能性が高いでしょう。

 

紹介状には日々の生活の状況などは書かれていないので、まずは起床時間や就寝時間、日中どんなことをして過ごしているか、そのときの気分などについてAさんに聞いていきます。

 

そうすると、うつ病という診断自体は、確かに間違いないようです。問題は現在の治療や療養生活がAさんに合っているのか、ということになります。この時点で、私の頭の中には、ざっくりと次のようなボトルネックの可能性が浮上しています。

次ページ41歳会社員の「ストレスのもと」はこんなにも…

※本連載は、小椋哲氏の著書『医師を疲弊させない!精神医療革命』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

医師を疲弊させない!精神医療革命

医師を疲弊させない!精神医療革命

小椋 哲

幻冬舎メディアコンサルティング

現在の精神医療は効率重視で、回転率を上げるために、5分程度の診療を行っている医師が多くいます。 一方で、高い志をもって最適な診療を実現しようとする医師は、診療報酬が追加できない“サービス診療"を行っています。 こ…

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