抑制気味の資金調達と「債務依存体質の改善」
2021年上期、業界の国内外での債券発行が5480億元(前年同期比16%減)、うち国内市場での発行が7%減、海外市場での発行が29%の大幅減。不動産企業の債券発行はこれまで金額ベースで海外市場が5〜7割を占めていたが、米ドル建て債券市場が金利上昇など不安定な状況下、国内市場中心の発行になった。
債券償還額6990億元を差し引いたネット資金調達はマイナス、通年償還額も1.28兆元と過去最高になる見込み(7月5日付貝殻財経他)にもかかわらず、債券発行が抑え気味の背景としては、PBCが昨年来実施している三道紅線規制を受け、企業が債務を減らす必要に迫られていることが大きい。
同規制は企業の3つの紅線(負債資産比率、ネット負債率、保有現金対短期債務比の3つのレッドライン)の現状を基に、リスクの程度を3紅線すべて満たしていれば緑、逆にすべて満たしていない場合は紅、1つだけまたは2つ満たしていない場合は各々橙、黄とし、有利子負債規模の年間伸びを紅についてはゼロ、橙5%以下、黄10%以下、緑15%以下に抑える「四档管理」と呼ばれている。
金融機関の融資が不動産関連に集中するリスクを抑える管理通知(PBC、銀保監会が共同で発出)が2021年から実施されており、上記の通り、不動産関連融資の伸びが鈍化しそのシェアが低下している。他方で、当局が重視する「普恵金融」と呼ばれる貧困層などの社会的弱者や農村、零細企業向け融資(inclusive finance)の伸びが著しい。
三道紅線規制や不動産関連融資集中制限から債券発行や融資による資金調達が抑えられた結果、まさにこれら政策が目的としている業界の債務依存体質の改善が続いている。不動産シンクタンク克而瑞研究中心が99の重点不動産企業を調査したところによると、2020年上期から21年上期にかけ、ネット負債率と保有現金対短期債務比が大きく改善、特にネット負債率平均は55%ポイント低下。
また緑の割合が35%に上昇する一方(2020年13%)、黄は45%に低下(同51%)。橙、紅の割合も各々9%、11%に低下。41企業が紅→橙などの「降档」、うち35が1段階、5が2段階、1社が3段階改善、24が緑になった(8月27日付地元経済各誌)。多くの調査は総じて、負債資産比率は最もクリアするのが厳しい指標であることを示しており、緑の企業でも69〜70%と基準ぎりぎりが多く、また黄、橙の大半は同比率をクリアしていない。
債務体質改善は長期的には望ましいが、短期的には資金不足圧力となる。全国各地で資金不足に直面した開発業者の不動産プロジェクトが中断するケースが増加している。当面厳しい政策環境が続くことが予想され、7月以降、住宅価格や投資など不動産関連指標がやや弱含む兆しが見え始めていることから(上掲図表1~3)、業界では下期本格的調整局面に入るとの警戒感が強まっている。
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