執行官がやってきた…彼らの権限はどこまであるのか
執行官の現況調査は、競売の対象となる住宅に出向いて、屋外だけでなく室内にも立ち入って調査を行います。この執行官の現況調査は無断で行われることはなく、事前に「○月○日○時に執行官が自宅に行きます」というお知らせが自宅に届けられます。
執行官の現況調査では室内外の写真を撮影するだけでなく、居住者への聞き取り調査も行われ、プライバシーなどお構いなしに根掘り葉掘り聞かれるので、現況調査に立ち会うだけでも心理的な負担は相当大きいといえます。
たとえ自分の家であっても、執行官の立ち入りを拒否したり、妨害したりすることはできません。暴力で執行官の立ち入りを阻止しようものなら公務執行妨害罪となり警察官がやって来ます。
現況調査を避けるため居留守を使ったり、わざと不在にしたりしても無駄です。執行官には現況を調査する権限が与えられていますので、不在の場合は鍵を解錠して強制的に室内に立ち入り、調査を行うことができるからです。
不在の場合、現況を調査するため近隣住民への聞き取りが行われることがあり、そこから競売にかけられていることが知られてしまい、周囲の目が気になって、平穏な生活を送れなくなることもあります。
郵便ポストに大量に届く「不動産業者」からのDM
競売が開始されると、郵便ポストに不動産業者からのダイレクトメール(以下、DM)が大量に届くようになります。なかには、突然自宅を訪問し売却を迫るたちの悪い不動産業者もおり、写真を撮ったり、近隣住民への聞き込みを行ったりすることもあり、近所でよくない噂が広まってしまうこともあります。
では、なぜ不動産業者は競売にかけられていることを知っているのでしょうか。
競売が開始されると、裁判所内に配当要求終期の公告が掲示されます。不動産業者はこの公告を見て、競売にかけられた物件の所有者の氏名・住所を入手し、手あたり次第DMや電話、訪問営業などでアプローチしてくるのです。DMを送ってくる不動産業者はほとんどが悪質な業者です。
大量に送り付けられるDMの内容は嘘だらけです。「高値でご自宅を買い取ります」「引越代として100万円を保証します」「競売からあなたの大切な家を守ります」など、非常に魅力的な言葉があふれていますが、そんなうまい話はないのです。
任意売却で自宅の売却金額を決めることができるのは、住宅ローンの債権者だけです。不動産業者に買取金額を決定する権限はありませんので、高値で買い取るなど言い切れるはずもないのです。引越代を渡すかどうかも債権者次第なので必ずもらえる保証はなく、まして100万円もの高額な引越代を認めてくれることはありません。
このような嘘のDMを信じて任意売却の依頼をしたが、結局任意売却は失敗に終わり競売になってしまいそうだと相談に来られる方もたくさんいます。
何かにすがりつきたい気持ちは分かりますが、甘い言葉に乗ると取り返しがつかないことになりますので、DMを送り付けてくる業者は無視するのがいちばんです。また、いきなり自宅を訪ねてくる不動産業者はかなり悪質ですので、絶対に依頼しないようにしてください。