「競売へのカウントダウン」から「決定」に至るまで
住宅ローンの延滞が3〜6ヵ月続くと、期限の利益※を喪失し、住宅ローンの支払先は融資先の金融機関から保証会社に変わります。これ以降は分割での返済は認められませんので、一括で住宅ローンの残金を支払わなければ、自宅は差し押さえられ、競売にかけられることになります。
※ 期限の利益…債務者が、決められた期日までに決められた金額を支払っている限りは、融資先の金融機関も住宅ローン全額を一括で返せとはいえない、という借主の権利。
期限の利益喪失から1ヵ月……「代位弁済通知」
催告書に記載された支払期日が過ぎると、融資先の金融機関は保証会社に対し、住宅ローンの残金を、借主に代わって一括で返済するよう請求します。保証会社は、保証委託契約に基づき、請求された住宅ローンの残金全額を、借主に代わって金融機関に支払う「代位弁済」を行います。
保証会社が代位弁済をすると、住宅ローンの返済を求める権利(住宅ローン債権)は融資先の金融機関から保証会社へ移りますので、保証会社から「肩代わりしたお金を返せ」と請求が来ます。これが代位弁済通知という書面です。期限の利益喪失からおよそ1ヵ月で送られてきます。
代位弁済通知には、①保証会社が借主に代わって住宅ローンの残金を融資先の金融機関に返済(代位弁済)したこと、②今後は融資先の金融機関ではなく保証会社が返済先になること、③ただちに遅延損害金を含む住宅ローンの残金を一括で支払うこと、④支払いがない場合は強制執行等の法的手続を取ること、が書かれています。
とはいえ、毎月の返済にも困窮している人にとって、住宅ローンの残金を一括で支払うことはほとんど不可能です。保証会社も、延滞を続けている人から一括で返してもらえるとは思っていません。代位弁済後は、早々に見切りをつけて、競売申立ての準備を始めるのです。その期間はわずか半月から1ヵ月程度といわれています。払えなければ、自宅を強制的に売却して、肩代わりしたお金を回収する、というわけです。
そのため、代位弁済通知が届けば、競売へのカウントダウンが始まったと考えるべきです。
代位弁済から2〜3ヵ月……「競売開始決定通知」
代位弁済通知後、2〜3ヵ月程度で、裁判所から「競売開始決定通知」が送られてきます。これは、競売手続きが開始されたことを知らせる書面です。
競売とは、住宅ローンを返済できない場合に、債権者である保証会社が、自宅に設定した抵当権に基づいて裁判所に売却を申し立てることで、裁判所が自宅を強制的に売却する手続きのことです。要するに、裁判所が主導するオークションです。
裁判所は競売申立てがされると、抵当権が付いた不動産(自宅)に差押えの登記を行います。差押えの登記がされると、以後、所有者(住宅ローンの借主)は自宅を自由に処分することが制限されます。「処分する」とは、自宅を売却したり、他人に貸したり、あるいは新たに抵当権を設定したりすることです。
「制限される」とは、差押えの登記後に勝手に自宅を売却しても、差押えの登記が優先されるという意味です。もっとも、使用は制限されませんので、差押えの登記がされても、競売による買受人が現れない限り、これまでどおり自宅に住み続けることはできます。