【関連記事】空気中の二酸化炭素の割合が「数十年で0.01%上昇した」意味
血液を全身に送り出すポンプの役割を担う「心臓」
酸素や栄養を体全体に運んでいるのは血液です。体の隅々の細胞(さいぼう)まで酸素と栄養を運ぶために、全身に血管が張りめぐらされています。
まずは、血液を全身に送り出すポンプのような役割をしている器官、心臓について話をしましょう。
みんなの心臓を前から見ると、図表1のように四つの部屋に分かれています。「右と左が変だよ?」って思った人はいますか?
でも、自分の心臓を前から見ることはできませんよね?
この図は、人と向き合ってその人の心臓を前から見た状態の図です。
それぞれの部屋には血管がつながっているのがわかりますか?
今回は、その部屋と血管の名前、それぞれの血管がどこに向かっているのか、どこから帰ってきているのか…これらを即答できるようになることが最大の目標です。
ただ、いきなりこの図を覚えてはダメですよ。軽く眺めたら、まずは先を読み進めてくださいね。
「心臓から遠ざかる血液」が流れているのが「動脈」
最初に覚えたいのは、血管の名前です。血管の名前のつけ方にはルールがあるので、まずはそのルールを覚えてしまいましょう。ルールは簡単です。
心臓から遠ざかっていく血液が流れているのが「動脈(どうみゃく)」。
心臓に近づいていく血液が流れているのが「静脈(じょうみゃく)」。
電車でも、東京駅から遠ざかっていくのを下り電車、東京駅に近づいていくのを上り電車と呼ぶのと同じようなルールですね。
動脈と静脈について、もう少しくわしく説明していきますよ。
動脈は、心臓から遠ざかっていく血管。つまり、心臓から送り出されたばかりの、これから全身をめぐる血液が流れている血管です。
人間の血管を全部つなげてみると、地球2周半くらいの長さになると言われています。この長い距離(きょり)をこれから旅するわけですから、当然最初の勢いはとても強いものになります。
そのため、動脈は、厚く、弾力性があるゴム管のようになっています。心臓からドクンッと血液が送り出されるたびに、伸びたり縮んだりしている、この動きが脈拍(みゃくはく)です。
みんなも、1分間あたりの脈拍数を数えたことがあると思います。そのとき、手首や首を触って脈をとったでしょう?
まだ体で使い始める前の大切な血液が流れている動脈は、ケガをしても切れないように、手首や首などの特別な場所を除いて体の内側を通っているんです。体の内側に隠しているということですね。
静脈は、心臓に近づいていく血液。言い換えれば、体の各所で使い終わった、これから心臓に戻っていく血液が流れています。
もうかなりの距離(きょり)を旅していますから、ほとんど勢いはありません。ですから、動脈と比べ、薄く、弾力性がない血管です。
勢いがないので、脈拍もないですし、体の外側を流れています。
勢いがなくなりすぎて逆流しないように、静脈には図表2のような弁というつくりが備わっています。
弁は、血液の逆流を防ぐためのつくりです。
この弁は、心臓にもついています。心臓は上下が交互(こうご)に伸縮します。そのときに、血液を流したい方向と逆に流れないようにしているのです。
この心房(しんぼう)と心室(しんしつ)が交互に伸び縮みすることを、拍動(はくどう)と言います。
心臓は筋肉のかたまりで、大きさはだいたいにぎりこぶしくらい。体の真ん中よりも少しだけ左側に寄っているのはみんな知っていますね。
図表3を見ると、左心室(さしんしつ)を囲む筋肉の壁(かべ)がとても厚いことがわかりますか?
左心室は、全身に血液を送り出す血管がついているところです。これから全身を旅する血液を勢いよく送り出すために、壁がとくに厚くなっているんですよ。