(※写真はイメージです/PIXTA)

診療報酬の削減やコロナ禍による受診控え、それに伴う「長期処方患者」の増加…。クリニックの経営環境は苦しくなる一方です。コロナ禍が収束すれば経営状況も回復すると考える医師も少なくないようですが、開業医の未来は、決して楽観視できるものではありません。ただ診察をこなすだけでは淘汰される時代において、クリニック経営者に求められるスキルや姿勢とはどのようなものでしょうか。

経営力の根幹は「トレンドを読む力」

ところで、経営力とはなんでしょうか。人によって答えはさまざまだと思います。事業プランを立てる構想力を挙げる人もいるでしょうし、部下を育成する力や、あるいは市場を分析する力を挙げる人もいると思います。

 

これらの能力も、経営力の重要な一部だと思います。しかし私は、経営力のなかで一番大切なのは「トレンドを読む力」だと感じています。

 

私は常に、どの病気の患者が自分の院で増減しているか、あるいは、どの地域の患者が増減しているかなどの指標をチェックしています。

 

そうすることで、私の院が患者からどのように評価されているか推し量ることができるからです。

 

例えば、このところ、「舌下アレルゲン免疫療法」を望む患者が増えています。これはスギ花粉症やダニアレルゲンなどに悩む患者に有効な治療法で、通常は耳鼻科で受けるケースが多いものです。

 

ところが私の院の診察圏では、ほかの耳鼻科などを差し置いて、私の院が8~9割のシェアを獲得しています。これは、舌下アレルゲン免疫療法がトレンドになっていることをいち早くキャッチし、私の院の看板として大々的に売りだした結果でした。

 

私はすずきこどもクリニックのほかに、サービス付き高齢者住宅「グランドール紀の風」の経営を行う株式会社やさしさも経営しています。これも、トレンドを読んでの動きです。

 

私の院のある和歌山県新宮市では、他地域と同様に少子化が進んでいます。1980年における新宮市の年少人口(0~14歳人口)は9188人でしたが、2015年には3507人と6割以上も減っています。

 

つまり、小児科クリニックとしての対象患者数は先細っているわけです。

 

一方、1980年の老年人口(65歳以上)は5363人だったのに対し、2015年には1万377人とほぼ倍増しています。高齢者相手のビジネスに進出すれば、事業の柱が増えて経営が安定するというのが読みでした。2016年に創業した株式会社やさしさの事業はすでに軌道に乗り、私の予測が正しかったことを証明しています。

 

 

鈴木 幹啓

すずきこどもクリニック院長

 

 

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※本連載は、鈴木幹啓氏の著書『開業医を救うオンライン診療』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

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鈴木 幹啓

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