「自分で自分の透析をする」腰が引けてしまうが…
これだけのメリットがある在宅透析ですが、導入するには施設で医療スタッフが行っていることを自分でできるようになる必要があります。
国内では、在宅血液透析が保険収載された1998年に、患者とその家族、医療機関などによる在宅血液透析研究会が発足しました。穿刺(せんし)方法をはじめとするトレーニングのしかたなど、在宅透析導入がより安心かつ確実なものになるよう話し合いを重ねることにより、改善、進歩してきています。
もちろん、在宅透析を導入している個々の医療機関でも、患者向けのトレーニングをはじめ、機器の設置やフォローまで責任をもって行っています。
当院の場合は、在宅血液透析の導入前に、約3ヵ月間のトレーニング期間を設けています。その間は施設血液透析をしていただき、通院日に、在宅血液透析の研修を行っています。回路の組み立て方からはじまり、器械の仕組みと操作方法、自己穿刺のしかた、透析後の後片付けまで、覚えることは多く、決して楽ではありません。当院ではマニュアルを作成し、読んで理解し、実際にやってみて覚えられるようにしています。
また、透析を単なる作業であるとか、器械の操作として教えるのではなく、透析の必要性や、病気についてもより深く理解してもらえるよう学んでいただきます。
透析は治療です。在宅透析はいうなれば、自分で自分を治療する行為です。だからこそ、作業であってはならないのです。自分の体のこと、病気のことをよく知って初めて、適切な透析を行い、自分を治療することができるようになるのです。透析中に問題が起きた場合の対処法も知っておかなければなりません。
当院では習得できたかどうかを確認するチェックシートも運用しており、別々の2人の医療スタッフが、習得したことを確認できてからゴーサインを出します。
医療スタッフと同じことをする……と聞いて、腰がひける人もいるかもしれません。確かに、短期間でマスターする人もいれば、若干、時間がかかる人もいますが、当院では在宅透析を希望した方で、習得ができず導入に至らなかった人はほとんどいません。
自分でできるようになることで、自分の体は自分で管理するという意識も向上します。このことも、体調を良くすることにつながります。つまり、在宅血液透析自体、体に良い透析であることに加え、自己管理ができるようになることで、いっそう、体の状態が良くなる、というわけです。