「妻に楽をさせてあげたい…」自分を責めていたAさん
透析患者の30代男性Aさんは、先天性の腎疾患のために20代から週3回、施設血液透析を受けていました。結婚しており、奥さんと共稼ぎで、2歳になろうとするお子さんがいます。育児休暇が明けたばかりで、保育園への送り迎えも含め、育児全般を奥さんが働きながら担わなければなりません。
Aさんは夕方6時に会社を出て、近くのクリニックへ向かいます。それから3時間の透析を受けて、帰宅は夜10時前。そうすると奥さんは仕事と子どもの世話でくたびれ果て、食事もせずリビングでうたた寝していることも多いそう。そんな姿を見るたびに、「自分が透析をしていなければ、育児も分担して、妻に楽をさせてあげられるのに」と自分を責めてしまっていたそうです。
しかし、そんなAさんが在宅血液透析のことを知り、最初は自分にできるのだろうか、と不安だったものの、もっと時間的に余裕のある生活をして、奥さんの負担を軽くしてあげたいと一念発起し、トレーニングを経て在宅血液透析に移行しました。
今、Aさんは家族との夕食の時間とその前後を透析に使っているそうです。仕事と家庭の両立がしやすくなり、奥さんとの会話も増え、言葉が分かるようになってきた子どもも交え、家族団らんの時間がとても楽しいと笑みをこぼします。
会社も理解を示し、在宅血液透析になっても基本的に夕方6時きっかりでの退社を認めてくれていますが、どうしてもその日のうちにしなければならない仕事があるときには、体調に差し障りがない程度の、多少の残業もできるようになりました。
体調も良くなってきて、フットワークが軽くなり、仕事も以前よりバリバリとこなせるようになってきたとのこと。気持ちも前向きになり、「まだまだ自分は頑張れる」と、いろいろなことに対して自信をもてるようになったそうです。
施設血液透析では、透析に時間を取られ人とのコミュニケーションの機会が少なくなってしまいがちですが、このように在宅血液透析では、特に家族がいる人にとっては、透析中も家族がそばにいる状況をつくることができるので、精神的にもとても支えとなり、ストレスが減って、身体の調子も良くなることが期待できます。