(※写真はイメージです/PIXTA)

病院での透析治療は、週3回かつ1日4時間程度、じっとしたままで受けなければなりません。自由な時間を失ったり、働けなくなったりする患者さんが多いなか、家にいながらにしてできる「在宅透析」も存在することをご存じでしょうか? 30代患者・Aさんの事例をもとに、南青山内科クリニック院長の鈴木孝子氏が解説します。

「透析になったら人生終わり」とは真逆の世界

さらに、患者さん本人だけではなく、家族など周囲の人も透析に関する知識が身につきます。

 

在宅血液透析では、原則として、緊急時対応が可能な介助者が1名いることが導入の条件となり、ほとんどは同居家族の方です。導入前の研修にはできるだけ介助者も参加いただくようにしています。それにより、家族と一緒に食事や運動の管理を行うことができるようになり、健康増進につながります。

 

体重や血圧を毎日把握し、これだけ増えたから水分量を控えようとか、運動を積極的にしようなどといったことが、家族と一緒に考えられるようになることで、より積極的に取り組めるようになると期待されます。

 

それを継続することで体調がより良くなれば、自分に自信がもてるようになります。ストレスも減り、精神的にも上向いて、ポジティブに日々を送れるようになる、という相乗効果や正のスパイラルが生まれれば、透析が足かせになることのない、充実した人生を送れるようになるのです。

 

就労に限らず、地域活動や趣味のサークル、ボランティアなど、社会と関わる機会はたくさんあります。気持ちが前向きになれば、自ずと「これをやってみたい」「これに興味がある」と、人や場との関わりをもてるようになります。

 

それが生きる楽しみをつくりだしたり、増やしたりして、精神面も身体面にも良い影響をもたらします。「透析になったら人生終わり」とは真逆の世界が、在宅血液透析なら開けていく可能性が十分にあるのです。

 

なお、在宅血液透析になっても、通院はゼロにはなりません。月1回程度、胸部レントゲンを撮ったり、血液検査をして、その後の透析計画を決めていきます。しかし、週3回通うよりもぐっと頻度は減るので、時間的にも余裕ができるだけでなく、院内感染のリスクが減ることも、在宅血液透析のメリットといえます。

 

 

鈴木 孝子

南青山内科クリニック 院長 

※本連載は、鈴木孝子氏の著書『「生涯現役」をかなえる在宅透析』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

「生涯現役」をかなえる在宅透析

「生涯現役」をかなえる在宅透析

鈴木 孝子

幻冬舎メディアコンサルティング

わが国で透析といえば一般的に、医療機関に通って行う「施設血液透析」のことを指します。 実際に9割の患者がこの方法で治療を受けています。しかしこの方法は、人間らしい生活が奪われるといっても過言ではなく、導入直後は…

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