(※写真はイメージです/PIXTA)

英国国立ウェールズ大学経営大学院にて「医療経営学修士号」を取得した臨床医である角田圭雄氏の著書『MBA的医療経営』より一部を抜粋・再編集し、医療経営についての見解を紹介します。

今、医療に経営学が必要な6つの理由

なぜ今、医療者が経営学を学ぶ必要があるのでしょうか。

 

第一に、日本において医療マネジメントが未発達であることが挙げられます。マネジメントの欠如は、病院に限りません。日本の組織(企業)では「足りないリソース(資源)を気持ちで補わせる」「全体的問題を個人の努力に押し付ける」という日本的精神論が根付いています。最近のブラック企業における社員の過労自殺などもその一表現型かもしれません。

 

病院の会議でも「患者数を確保してください」「救急患者をとにかく全例診療してください」と一方的に戦術的な指示・命令が繰り返され、真に戦略的な会議に直面した経験はほぼ皆無です。

 

「なぜ患者数が確保できないのか?」「救急患者を全例診療するにはどのような課題があり、どのように克服できるのか?」

 

そのような問いに関して議論されることは少ないのが現状です。

 

特に、病院は医師、看護師など専門的知識を有した人々の集合体であり、経営学やマネジメントを専門とした人材は希少であることが原因の一つにあると思います。医学部の教育に経営やマネジメントといった授業は存在しません。むしろ管理栄養士の教育などには既に取り入れられ、国家試験にも出題されています。

 

日本では病院の管理者が医師でなければなりませんが、米国や英国では病院の管理者は医師とは限らず、経営学修士号(Master of Business Administration:MBA)や公衆衛生学修士号(Master of Public Health:MPH)などの学位取得者が担う場合もあります。また欧州では看護部長や事務長、医師の三頭制を基本にしています。国内での三頭制の成功事例としては総合病院聖隷浜松病院などが有名です。

次ページ専門性の高い分野に訪れた「IT化」の厳しい波

※本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『MBA的医療経営』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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