(※写真はイメージです/PIXTA)

住宅金融支援機構が公表しているデータによると、コロナ禍の現在、25人に1人が住宅ローンの返済に問題を抱えていると分かっています。もし払えなくて延滞してしまった場合、どうなるのか。そして、後戻りできなくなるラインはどこなのか…。クラッチ不動産株式会社代表取締役の井上悠一氏が解説します。

恐ろしい…「残金全額が一括支払い」となる延滞期間

●延滞2〜3ヵ月……「再度のご通知」「来店依頼」

 

延滞が2〜3ヵ月続くと、「再度のご通知」や、返済が滞っている理由や現在の収支状況を聞き出すため、金融機関への来店を促す「来店依頼」等の書面が届きます。金融機関によっては電話をかけてきたり、自宅へ訪問したりしてくる場合もあります。

 

●延滞3〜6ヵ月……「催告書」

 

延滞が3〜6ヵ月続くと、「催告書」もしくは「期限の利益喪失予告書」といった書面が届きます。これらの書面は内容証明通知郵便で届くことがほとんどで、それまでの通知書などに比べ、内容も厳しいものとなります。催告書等には主に、①指定の期日までに支払えなければ期限の利益を失うこと、②期限の利益を失えば法的手続を取ること、などが書かれています。

 

[図表3]催告書のひな形

 

住宅ローンは通常、借りたお金を決められた期日に分割で支払うことを約束して契約しますが、この分割で支払うことができることを「期限の利益」といい、住宅ローンの借主(債務者)の権利とされています。つまり、債務者が、決められた期日までに決められた金額を支払っている限りは、融資先の金融機関も住宅ローン全額を一括で返せとはいえないのです。

 

住宅ローンの契約書(金銭消費貸借抵当権設定契約証書)には、期限の利益喪失条項というものが設けられていて、借主が自己破産や住宅ローンの支払いを滞納した場合などには、期限の利益を喪失し、ただちに住宅ローンの残金を一括で支払う旨が記載されています。そのため、延滞が3〜4回続けば、金融機関は、期限の利益喪失を予告する書面=催告書を送ってくるのです。

 

この書面が届けば、書面に記載された期日までに遅延損害金を含めた滞納分すべてを支払わない限り、期限の利益がなくなります。期日が過ぎたあとに収入が回復し、住宅ローンの返済を続けられる目途が立ったとしても、従来どおりの分割での支払いに応じてもらえません。「期限の利益」は、すでに失われているからです。

 

住宅ローンの残金すべてを一括で支払わなければ、問答無用で法的手続(競売手続)が進められてしまうのです。この意味で、「催告書」は、住宅ローンをこれまでどおりの分割で払っていきたければ指定した期日までに延滞分を全額支払えという金融機関からの最終通告なのです。

 

期限の利益喪失は、後戻りのできない「分かれ道」となります。これ以後は、ボーナスが入ったので支払いますといっても、もう遅いということになります。

 

なお、この時期には、信用情報の異動情報が確実に記載されてしまうため、新たな借入は厳しくなってしまいます。

 

 

井上 悠一

クラッチ不動産株式会社 代表取締役

 

※本連載は、井上悠一氏の著書『あなたを住宅ローン危機から救う方法』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

あなたを住宅ローン危機から救う方法

あなたを住宅ローン危機から救う方法

井上 悠一

幻冬舎メディアコンサルティング

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