前回は、受益者と委託者を守るために、信託法・信託業法にて課せられた受託者の義務について説明しました。今回は、善管注意義務と忠実義務の義務以外に重要な受託者の義務について見ていきます。

複数の受益者は公平に扱われる

前回に引き続き、受託者の義務について見ていきます。

 

善管注意義務と忠実義務という基本となる2つの義務に続き、その他の義務を説明していきましょう。

 

まずは受託者の公平義務です。これは受益者が複数いる場合に求められる義務で、信託法では33条において以下の通りに規定されています。「受益者が2人以上ある信託においては、受託者は、受益者のために公平にその職務を行わなければならない。」

 

ここでいう公平とは、信託の定めに従って公平であることをいいます。例えば、2人の受益者がいる場合に、それぞれの受益権が同一内容であれば、2人が受け取る配当は同額でなければいけません。ただし、それぞれが異なる受益権を持っているのであれば、それに応じた配当がなされることは公平に反しないものとされています。

信託財産の分別管理が義務づけられている理由

信託財産は委託者、受託者それぞれの財産から独立していることは第4回で説明しましたが、信託法はそれに加えて、信託財産を分別管理することも義務づけています。信託財産は委託者、受託者のいずれが破産した場合にも、その影響を受けないことになっていますが、きちんと分別管理されていなければ、信託財産の独立性を証明することができない危険が考えられます。

 

もし、独立性が証明できないとなると、法律上は許されていない信託財産への強制執行が行われてしまうかもしれません。そのような危険を生じさせないため、受託者には信託財産を明確に受託者の財産や他の信託財産と分別して管理することが義務づけられているのです。

 

この点について定めた信託法34条はいささか長い条文となっており、財産の種類ごとにどのような形で分別管理するかを細かく定めています。不動産以外の財産についても、念のため、どのように分別管理されているかを以下の図表のようにまとめておきましたのでご参照ください。

 

【図表 財産の種類ごとに求められる分別管理の方法】

 

【POINT】

① 善管注意義務、忠実義務が受託者の義務の基本
②複数の受益者は公平に扱われる
③財産の分別管理も財産保全のために義務づけられている

本連載は、2013年12月2日刊行の書籍『資産運用と相続対策を両立する不動産信託入門』から抜粋したものです。その後の法改正は反映されておりませんので、ご留意ください。

資産運用と相続対策を両立する 不動産信託入門

資産運用と相続対策を両立する 不動産信託入門

編著 千賀 修一

幻冬舎メディアコンサルティング

高齢の不動産オーナーなどは、老後の不動産管理や賃貸経営、そして相続に関して、さまざまな不安要素が生じてくるものです。不動産管理に関する知識がなかったり、あるいは財産を目当てとした思わぬトラブルなどが発生したりし…

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