(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、東海東京調査センターの中村貴司シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)への取材レポートです。今回は、伝統的ファイナンス理論を基にしたファンダメンタルアプローチとして使われることも多い「配当割引モデル(DDM法)」と「ディスカウント・キャッシュフローモデル(DCF法)」の概要とその限界について見ていく。

ディスカウント・キャッシュフローモデル(DCF法)

「DCF」はdiscounted cash flowのことで、「割引キャッシュフロー」と呼ばれる。そして、DCF法は、資産が生み出すキャッシュフローの割引現在価値をもってその理論価格とする方法で、以下の計算式で表される。

 



PV=現在価値(理論株価) 
FCF=フリーキャッシュフロー
ρ =割引率(通常、WACC「加重平均資本コスト」が使われる)

 

WACC=D÷(D+E)×rD×(1-税率)+E÷(D+E)×rE

D:有利子負債総額
E:時価総額(または株主資本) 
rD:負債コスト
rE:株主資本コスト

 

このDCF法にも、次のような欠点がある。

 

【DCF法の欠点】

① フリーキャッシュフローの予測に加え、加重平均資本コストの各項目の予測数値が異なれば、理論株価は大きく変動してしまう。

② そもそもWACC自体の株主資本コストが過去のβの値をベースとしており、将来のFCFの割引に用いる点に問題がある。

③ 加えて、WACCによる割引率は、将来にわたって資本構成(負債と株主資本の割合)や税率が一定であることを前提にしているが、将来の資本構成や税率がドラスティックに変わるのであれば理論株価を大きく動かすことになる。

 

■まとめ

市場の歪みを収益化するヘッジファンドの特徴の一つとして、①より合理性と妥当性が高いと認識されているファンダメンタルズアプローチの運用モデルの欠点や、②その前提に大きな変化をもたらす事象を予測し、投資判断に活かしてきたことは、市場においてα(=投資の成果)を目指す投資家においては忘れてはならない点であろう。

 

中村 貴司

東海東京調査センター

投資戦略部 シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)

 

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このレポートは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。投資判断の最終決定は、お客様自身の判断でなさるようお願いいたします。このレポートは、信頼できると考えられる情報に基づいて作成されていますが、東海東京調査センターおよび東海東京証券は、その正確性及び完全性に関して責任を負うものではありません。なお、このレポートに記載された意見は、作成日における判断です。

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