(※写真はイメージです/PIXTA)

2021年の大河ドラマ『青天を衝け』の主人公・渋沢栄一は、パリで学んだ知識を生かし、武士と商人が力を合わせて商いを営む「商法会所」を設立。駿府藩の財政改革に乗り出します。渋沢はその生涯において500社を数える企業の設立や運営などに関わったと言われています。歴史好きとして知られるお笑い芸人のビビる大木さんの解説を読めば、大河ドラマを楽しめること間違いなし。※本連載は、ビビる大木氏の著書『ビビる大木、渋沢栄一を語る』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

信頼できる人材に事業を任せ、多くの企業を発展させた

明治から大正にかけて活躍した実業家である渋沢さんは、その生涯において500社を数える企業の設立や運営などに関わったと言われています。まさに、「日本資本主義の父」と言えます。

 

それでは、なぜ、渋沢さんは500社も創業することができたのでしょうか。僕はいろいろと関連書籍を読みながら、その理由を自分なりに探しました。そこで得た結論は、「渋沢さんは独り占めしない。独占しない」というのが、理由ではないかと思いました。

 

渋沢さんが活躍した時代は、その一方で、僕でも名前は聞いたことがある「三菱」や「三井」といった「財閥」が急速に成長してきた時期でもありました。

 

三菱を創業した岩崎弥太郎と渋沢さんには、手腕に大きな違いがありました。財閥系の実業家たちはほとんど会社の株式を公開せず、財閥という閉じられたネットワークの中で株を持ち合っていました。

 

そして、実際の経営は、「専門経営者」たちに任せて、一族の一人が経営のトップに君臨するという、とても閉鎖的な経営をしていました。

 

一方、渋沢さんはどのようにしていたかというと、関わった企業は多くが株式会社の形態を取り、少額でも広く民間から出資を募り、大きな会社をつくっていきました。そして、これらの企業を渋沢一族で固めず、自分のカラーを濃くしませんでした。一貫して開放的な経営を続けていたのです。

 

生涯500社もの企業に関わることができたのは、自分が経営の主導権をすべて握ろうとしなかったからでした。渋沢さんは、経営の指揮を信頼できる人間にどんどん任せていきました。たとえば、浅野セメント(現・太平洋セメント)の経営で知られる浅野総一郎もまた、その一人です。こうしたビジネスパートナーたちが、渋沢さんの多忙な活動を支えていたのでした。

 

ですから、渋沢さんには、優秀で有能な人材がどんどん必要になってきますし、そんな人間たちがどんどん集まってくるのでした。しかも、自分のカラーを強く出さず、開放的な経営が可能となるための人的ネットワークをつくって広げていったのです。こうした人的ネットワークをつくれたのも、渋沢さんのすごさの一つだと思います。

 

また、渋沢さんは公益の追求者でした。「日本全体を良くしたい」という公益を達成するために、次々と企業の創業に関わったのです。現在のように経済成長が頭打ちとなる状況では、自社の利益だけを見ている経営者ばかりです。しかし、渋沢さんは、むしろ他の企業と協力して、日本の経済そのものを良くしていきたいという発想でした。

 

渋沢さんは時間の余裕ができると地方に出向き、さまざまな企業の設立に携わっています。各地の鉄道会社を支援し、立ち上げに関わり、その他にも港湾、ガス、電気といったインフラに関連する企業にも多く関わりました。こうした渋沢さんの姿勢は、公益の追求そのものだと思います。

 

明治から大正にかけての時期は、閉鎖的な経営で力を蓄えていった財閥も、一方で渋沢さんに代表される非財閥の開かれた経営をするグループも、ともに発展しました。そういう意味で、渋沢さんは、名プロデューサーだったと言えるでしょう。

 

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』というアメリカ映画がありますが、みなさん勝手にスピルバーグが監督だとイメージしていると思います。しかし、スピルバーグは製作総指揮というプロデューサーでした。渋沢さんもそうだろうと思います。そう考えると、適材適所を見抜く力を持っていた渋沢さん、相手の力量を見抜く力、眼力があったということです。

 

 

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ビビる大木、渋沢栄一を語る

ビビる大木、渋沢栄一を語る

ビビる 大木

プレジデント社

歴史好き芸人・ビビる大木が、 同郷の偉人・渋沢栄一の遺した言葉を紐解く! 「はじめまして、こんばんみ! 大物先輩芸人と大勢の後輩芸人の狭間で揺れる40代『お笑い中間管理職』の僕。芸人としてこれからどうやって生き…

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