(※写真はイメージです/PIXTA)

マンションの大規模修繕工事は何年おきに行うべきなのか。一般的には「12年周期」で行うべきとされ、それを推奨する管理会社や工事会社も多い。実際、マンション管理組合や住民はどう考えるべきなのか。※本連載は、松本洋氏の著書『マンションの老いるショック!』(日本橋出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

定期的に大規模修繕工事を円滑に行うには

■大規模修繕工事の総会決議

 

区分所有法第17条(共用部分の変更)のうち、「その形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」を除いた変更について第17条が適用される、と規定しています。この法律は平成14年に改正されるまでは、「共用部分の変更(改良を目的とし、かつ、著しく多額の費用を要しないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数による集会の決議で決する。」とされていました。

 

大規模修繕工事は多額の費用を要する場合が多いので、区分所有者及び議決権の各3/4以上で議決する特別決議が必要とされていましたが、平成14年の改正法施行後は、敷地及び共用部分の著しい変更を伴わない場合は出席組合の議決権の過半数で決することができる普通決議で大規模修繕を実施できるものと考えられます。このように区分所有法第17条1項本文改正の趣旨は、定期的に行う大規模修繕工事の円滑な実施を図ることにありました。

 

それでは、敷地及び共用部分の変更でその効用の著しい変更を伴う工事とはどのような工事でしょうか。標準管理規約第47条関係のコメントでは基本的には各工事の具体的内容に基づく 個別の判断によることを踏まえて次のように解説しています。

 

ア バリアフリー化の工事に関し、建物の基本的構造部分を取り壊す等の加工を伴わずに階段にスロープを併設し、手すりを追加する工事は普通決議により、階段室部分を改造したり、建物の外壁に新たに外付けしたりして、エレベータを新たに設置する工事は特別多数決議により実施可能と考えられる。

 

イ 耐震改修工事に関し、柱やはりに炭素繊維シートや鉄板を巻き付けて補修する工事や、構造躯体に壁や筋かいなどの耐震部材を設置する工事で基本的構造部分への加工が小さいものは普通決議により実施可能と考えられる。

 

ウ 防犯化工事に関し、オートロック設備を設置する際、配線を、空き管 路内に通したり、建物の外周に敷設したりするなど共用部分の加工の程 度が小さい場合の工事や、防犯カメラ、防犯灯の設置工事は普通決議により、実施可能と考えられる。

 

エ IT化工事に関し、光ファイバー・ケーブルの敷設工事を実施する場 合、その工事が既存のパイプスペースを利用するなど共用部分の形状に 変更を加えることなく実施できる場合や、新たに光ファイバー・ケーブルを通すために、外壁、耐力壁等に工事を加え、その形状を変更するような場合でも、建物の躯体部分に相当程度の加工を要するものではなく、 外観を見苦しくない状態に復元するのであれば、普通決議により実施可能と考えられる。

 

オ 計画修繕工事に関し、鉄部塗装工事、外壁補修工事、屋上等防水工事、給水管更生・更新工事、照明設備、共聴設備、消防用設備、エレベータ設備の更新工事は普通決議で実施可能と考えられる。

 

カ その他、集会室、駐車場、駐輪場の増改築工事などで、大規模なものや著しい加工を伴うものは特別多数決議により、窓枠、窓ガラス、玄関 扉等の一斉交換工事、既に不要となったダストボックスや高置水槽等の撤去工事は普通決議により、実施可能と考えられる。

 

特別決議を必要とする修繕、普通決議で良い修繕について、上記のような例を参考に判断してください。

 

松本 洋
松本マンション管理士事務所 代表

 

 

マンションの老いるショック!データから学ぶ管理組合運営

マンションの老いるショック!データから学ぶ管理組合運営

松本 洋

日本橋出版

分譲マンションは現在、「区分所有者の老い」「建物設備の老い」という二つの老いの問題を抱えています。 本書では、国土交通省から公表されているデータや、筆者のマンション管理士としての経験から得た知識を基に「マンシ…

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