(※写真はイメージです/PIXTA)

マンションの大規模修繕工事は何年おきに行うべきなのか。一般的には「12年周期」で行うべきとされ、それを推奨する管理会社や工事会社も多い。実際、マンション管理組合や住民はどう考えるべきなのか。※本連載は、松本洋氏の著書『マンションの老いるショック!』(日本橋出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

長期修繕計画はあくまでも計画で確定ではない

■広報体制と修繕履歴の整理、保管

 

マンションの維持管理に当たって何よりも大切なのは点検、調査、診断や修繕工事をなぜ行うのか、どうすればいいのか、維持管理の必要性、実施方法などを組合員全員に理解し、協力してもらうことです。国土交通省の『マンション管理標準指針』では総会の議事を限られた時間で効率よく行うため、『重要な案件については、事前説明会やアンケートにより意見聴取している』を標準的な対応としています。

 

理由としては、アンケートの実施や事前説明会による意見の聴取が効果的な場合も多いこと、また、事前説明会により、区分所有者が議事を十分理解して総会に臨めることとなり、無用な質疑が避けられるとともに、適切な判断が期待できることがあげられます。

 

また、管理規約や長期修繕計画は、組合員からの要望があれば、閲覧できるようになっていることはもちろん、理事会や専門委員会での検討の過程や結果が公開され、それに対して質問や意見が言えるような体制がとられていることが望まれます。それには広報が重要です。

 

広報の方法としてはまずは、理事会ニュースなどの広報誌を発行し、管理組合に意見箱を設置する方法がよく行われています。意見箱を設置する場合には、予め意見箱に関するルール(細則)を策定することで意見箱の運用が行われます。外部に住んでいる区分所有者には、広報誌を郵送し、質問や意見はFAX等で受けるようにすることが親切な対応といえます。

 

また、若い世代の組合員が多いマンションでは管理組合でホームページを運営し、維持管理に関する検討を行う委員を募ったり、点検、調査、診断の依頼先の選定や工事に対する意見を求めたり、行った修繕工事を時系列に整理して公開している管理組合もあります。

 

ホームぺージで居住者からの意見を投稿すると、理事会や管理会社への意見を他の居住者に閲覧される事なく投稿することができます。理事会や管理会社から意見投稿者への返信も簡単です。

 

■大規模修繕工事の実施時期

 

長期修繕計画は、将来実施する計画修繕工事の内容、時期、費用等を確定するものではありません。長期修繕計画は、あくまでも計画で不確定な事項を含んでいます。

 

①建物及び設備の劣化の状況
②社会的環境及び生活様式の変化
③新たな材料、工法等の開発及びそれによる修繕周期、単価等の変動
④修繕積立金の運用益、借入金の金利、物価、消費税率等の変動

 

ですから5年程度ごとに調査・診断を行い、その結果に基づいて見直すことが必要です。何年経過したから必ず大規模修繕工事を実施する必要があるというものでもありません。

 

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マンションの老いるショック!データから学ぶ管理組合運営

マンションの老いるショック!データから学ぶ管理組合運営

松本 洋

日本橋出版

分譲マンションは現在、「区分所有者の老い」「建物設備の老い」という二つの老いの問題を抱えています。 本書では、国土交通省から公表されているデータや、筆者のマンション管理士としての経験から得た知識を基に「マンシ…

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