原因は妊娠中の食生活…?
そんなある日、悩んだ大友さんはとある人に頼ることに。
「息子の未来やこれからの生活を考えると不安でたまらなくなり、子どもの悩みを聞いてくれる相談ホットラインに電話を掛けました。誰でもいいから話を聞いてほしい、どうすればいいか教えてほしい、そんな藁にもすがる思いでした」
電話がつながると、大友さんはこれまでの経緯と自分の不甲斐なさを打ち明けました。相手の方は、40代くらいの女性の方で、時折相槌を打ちながら静かに聞いていたそう。
そして、大友さんが話し終えるとその女性は、
「妊娠中の食事はきちんとバランスよく摂られていましたか?」
と訊ねてきたのだとか。
まさかそんな話をされるとは思っていなかったので、言葉に詰まっていると、「妊娠中、お母さんは仕事が忙しく、自分のお身体を大切にされていなかったからなのでは、と気になって」とその女性は続けました。
「自分のせい」…言われた言葉は二度と消えない
「私のせいなんだ…私が妊娠中にもっと気を付けていれば…」そう思った大友さんは、ショックでそれ以上繋ぐことが出来ず、「すみません」と電話を切ったと言います。そこから、「自分のせいだ」「私が悪い」と自分を責めて子どものようにわんわん泣き続けたのだそう―――。
「息子を連れて夫が帰宅した後も涙は止まらず、息子も心配そうに私の周りをぐるぐると歩いていました」
しばらくして落ち着き、ようやく事情を話すと、大友さんの夫は顔をしかめてそのホットラインに苦情の電話を入れたそうです。折り返しですぐに謝罪の電話が来て、「誤解を与えるような伝え方をしてしまった。言葉を取り消します」と言ってもらったものの、大友さんは電話に出ることはありませんでした。
「取り消すと言われても、私の中には『自分のせいだ』という思いが消えることはありませんでした。毎日、何をしていても、自分を責め続けていました」
妊娠中に無理したことへの後悔
大友さんが息子さんを出産したのは、結婚して2年目のこと。大友さん夫婦は経済的な事情で、2人ともフルタイムの正社員。妊娠中の大友さんも法定の許すギリギリまでバリバリ働いていたそうです。
「体に負担をかけていることはわかっていましたが、子どもが生まれるまでに少しでも貯金しておきたいという思いが強く、かなり無理をしていたと思います。もちろん妊娠中の食事が発達と関係ないことは私も分かっていました。ですが、無理していた自覚があったからこそ、余計にあの女性の言葉が自分に重くのしかかりましたね…」
その後、大友さんは体調を崩し、そのまま仕事を退職。ノイローゼになり、息子さんを可愛いと思えなくなっていったと言います―――。
「たくさん笑いかけてくれる息子に、必死につくった笑顔で返すのがやっと。外に連れ出してあげる気力もなく、引きこもりがちになり、まともに遊んであげられない日々が続きました」