(※写真はイメージです/PIXTA)

「日本一忙しい小児科医」と言われる筆者が1日に診る患者数は平均200人。一般の医師にとっては1日100人でも驚異的な数字です。なぜ、これだけの患者を診ることができるのか? それは医師による診察時間を最大3分以内に収めているからであり、診断に必要な情報の9割を、看護師による問診で得ているからです。患者の待ち時間を極力短くしつつ、たくさんの患者を診るための「看護師の問診」について見ていきましょう。

正確かつ具体的に聞き取るために「問診表」は使わない

私の院では看護師の問診のため、特定の問診票や「シナリオ」は用意していません。また、質問項目数は他院とそれほど変わらないはずですが、質問と記録のやり方はかなりユニークです(【⇒写真を見る:筆者の院の看護師が実際に作成した「問診メモ」】)。

 

患者にまず確認するのは、どんな症状がいつから表れているかという点です。

 

例えば発熱を訴える患者の場合、熱がいつからどの程度上がったのかを必ず聞き取ります。また、看護師には「昨日から熱が出た」ではなく、「●月X日の何時頃から熱が出た」と書かせるようにしています。「昨日」「一昨日」という表現だと、直感的に理解しづらいし、正確性にも欠けるからです。

 

続いて、症状に合わせて掘り下げる質問を行っていきます。

 

嘔吐をしている患者なら、いつ、何回くらい、どんなものを吐いたか。下痢や腹痛はないかを聞いていくわけです。

 

このとき大切にしているのが、症状をできるだけ具体的に書かせること。問診票を使うと、この点がおろそかになりがちです。

 

例えば嘔吐をした患者の場合、嘔吐の欄にチェックを入れ、それで記録を終えてしまうのです。このような「看護師の思考停止」を避けるため、私はあえて問診票を使わないようにしています。

 

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正しい診断には「起きていない症状」の確認も不可欠

また、看護師に「起きていない症状」についてしっかり確認させることも必要です。私の院では、例えば主訴が嘔吐だった場合、「咳を『していない』」、「腹痛が『起きていない』」、「下痢を『していない』」、「血便が『出ていない』」などについても質問させ、カルテに記入するよう指導しています。

 

問診票の嘔吐の項目にチェックが入っていて、咳や腹痛、下痢、血便などの項目に〇も×もついていない場合、医師は正しい判断を下せません。

 

例えば胃腸炎で嘔吐した可能性もありますし、咳が原因で吐いてしまったのかもしれません。

 

一方、咳も頭痛も血便もない、と問診票に明記されていれば、おそらく胃腸炎だろうと判断がつきます。だから、「起きていない症状」の確認が何より大事なのです。

 

看護師にとって、問診で聞かなければならない項目は、診療科によってある程度固まっています。

 

一方、「起きていない症状」については盲点になりやすいため、普段から看護師への意識付けが大切です。

 

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次ページ患者が体調・病状をうまく説明できない場合は…

※本連載は、鈴木幹啓氏の著書『開業医を救うオンライン診療』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

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鈴木 幹啓

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