「看護師の接遇力」が患者の満足度を左右
患者は看護師に何を求めるでしょうか。それは「心地良い接遇」です。そこで私の院では、看護師に対して一流ホテル並みの接遇力を身につけさせています。
例えば、発熱患者を一般の患者から隔離するため、裏口から入らせるようにしています。このとき、看護師が「裏から入ってください『ね』」などと上から目線で患者に伝えるのは最悪です。患者は思わず、ムッとしてしまうに違いありません。「熱がある場合は裏口からお入りください『ませ』」と、きちんとした丁寧語で話さなければなりません。私は、看護師が患者に「~ね」と話しているのを聞いたら、すぐに注意をするようにしています。
新人看護師向け研修の初日は、丸一日かけて接遇のトレーニングだけを行います。指導役は、説明力の高い事務スタッフです。研修期間中は、その人にとって本来の仕事である事務仕事を一定程度免除する仕組みになっています。
そしてトレーニングを1ヵ月程度受ければ、新人看護師でも正しい言葉遣いを身につけられるようになります。
医療関係者のなかには、看護師の接遇力を高めて患者の満足度を高める私のやり方に対して異を唱える方もいらっしゃいます。「医は仁術」で、決してサービス業ではないというわけです。
私はそうした人々を決して否定はしません。医学に対してはいろいろな考え方があってしかるべきで、私のやり方が唯一の正解ではないと思います。
ただ、「患者をきちんと治療していれば、言葉遣いや態度などどうでもいいだろう」という考え方には、あまり賛成できません。
患者からすれば、「腕はいいが言葉遣いや態度が悪く、診察を受けていると気分を害する医師」より、「腕はいいし言葉遣いや態度も丁寧で、安心して診察を受けられる医師」のほうがいいに決まっています。診察態度があまりにひどいままだと、そのうち、多くの患者に逃げられてしまいます。クリニックは、ほかにもたくさんあるからです。そうして患者数が減ると、自分のやりたい医療は提供できなくなりますし、多くの人に役立つことも不可能です。それは、医師にとって大きな損失だと思うのです。
広く医療を提供してたくさんの人を幸せにする。その目的を果たすためには、接遇にも力を入れるべきだというのが、私の信念です。
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1ヵ月間かけて「問診スキル」を向上
私の院の診察システムでは、看護師の問診が大きなカギとなります。問診の段階で聞き漏らしが発生すると、私の診察時に確認すべき事柄が増え、患者一人あたりの診察時間が延びてしまうからです。
私の院の新人看護師は2ヵ月間にわたって研修を受けます。最初の1ヵ月間は接遇のトレーニングをしながら、ベテラン看護師に同行して彼らの問診のやり方を学ぶ期間です。次の1ヵ月では自ら問診を担当するようになりますが、このとき、新人看護師には問診結果を記したメモに名前を書かせています。
もし問診内容に不足があれば、すぐに呼び出して「~の情報が足りないと、私は~という間違った診断を下してしまうかもしれないよ。きちんと確認しなさい」と厳しく指導します。同じ間違いを繰り返す看護師もいますが、2回か3回指導したら、だいたいの人がきちんと覚えて間違わないようになります。
このとき注意したいのが、ミスの責任が誰にあるのか明確にすることです。
私の院では、問診を担当した看護師とは別の看護師が問診内容をダブルチェックし、間違いが起きる危険性を最小限に抑えていますが、それでもミスが起きることもあります。その際には、2人の看護師を同時に呼び出し、責任の所在がどちらにあるかはっきりさせます。そうすることで、ミスをした人は「もう二度と同じ失敗はするまい」と心に刻むのです。
一方、医師である私がミスをすることももちろんあります。そのときはうやむやにせず、看護師などにきちんと謝ります。責任の所在を明らかにし、きちんと反省して次に活かすことが、クリニック運営の鉄則の一つです。
ほかの医療機関で長く経験を積んだ看護師なら、研修期間は2ヵ月も必要ありません。問診の勘所をつかみ、2週間程度で研修を終えるケースもあります。一方、看護学校を卒業したばかりの若手でも、2ヵ月間あれば十分に問診をこなせるようになります。
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研修後も「優秀な看護師」をキープする努力が必要
ただし、看護師の問診スキルは常に磨く必要があります。そこで私の院では、問診スキルを高めるための勉強会を、週1回のペースで開催しています。
また、問診に不備を見つけたら、ベテラン看護師であってもすぐに呼び出して細かく指導します。私の院の看護師は、誰もが20回か30回くらいは、私から指導を受けた経験があるのではないでしょうか。
看護師のキャラクターによって、問診内容には多少のブレが生じます。そこで、看護師のタイプによって対応のやり方を変えるのは良い方法です。看護師のキャラクターを、「慎重―おおざっぱ」「マルチタスク可能―シングルタスクのみ」という2軸で考えてみます【図表】。慎重派の看護師はどんなにベテランになっても、仕事のなかで疑問点があると、その都度私に確認を求めます。
一方、ときおり問診内容に漏れを起こしたり、誤字脱字が多いおおざっぱな性格の看護師もいます。
こうして指導を行った結果、私の院の看護師は通常の枠を超えた質問スキルを兼ね備えるようになります。
高い問診力を身につけた看護師は非常に貴重な人材で、流出するとクリニックに大きなダメージを与えます。再び求人広告を出して採用活動を行い、教育を施し、一人前に育て上げるまでにはそれなりの期間が必要ですし、余計な手間や時間がかかってしまいます。そこで私は、看護師の待遇を他院より高くして優秀な人材を引き留めています。
私の院では、新卒の准看護師が月30万円、ベテランの准看護師は40万円以上の収入を得ています。また、事務スタッフの初任給も約25万円と、他院に比べてかなり高額に設定されています。
私の院のスタッフは忙しいし、高い能力や創意工夫を求められます。その代わりに、他院の1.5倍ほどもある給与額を受け取っています。優秀な人を確保するために一番有効なのは、やはりお金なのです。
鈴木 幹啓
すずきこどもクリニック院長
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