(※写真はイメージです/PIXTA)

大半のクリニックはオンライン診療の導入に消極的です。しかし、受診控えの患者を呼び戻したり、他院から患者を引き寄せたりできるうえ、サービスの質を落とすことなく、人件費や賃料などの固定費を削減することまで可能です。オンライン診療に進出するなら、競合がいない今が好機。実際に導入した医師が、オンライン診療で収益を上げるための成功ノウハウを解説します。

オンライン診療で収益を上げるカギは「診療の効率化」

オンライン診療にはいくつかのハードルがあります。最大のものが、診療時間が外来に比べてかかるという点です。通常の外来なら聴診器を当てるだけですぐ診断できる病気であっても、オンライン診療の場合はそうはいきません。カメラ越しの診察だけで判断材料を集めなければならないからです。

 

そして、診療報酬が低いオンライン診療に時間をかけ過ぎたら、利益が上がるはずなどありません。

 

そこで役立つのが、私が実践している診察ノウハウです。

 

私の院では、平均して1日約200人の患者を診察しています。一番忙しい時期には、8時半から22時半くらいまでかけて350人以上を診察することもあります。その日は、1時間あたりの患者数は最低でも25人以上、これほどまでに効率の良い診察を行っているクリニックはめったにないのではと自負しています。

 

こうした診察を可能にしているのが、私の院独自の診察ノウハウです。このやり方を応用すれば、オンライン診療でも高効率な診察が可能になります。

 

余談ですが、開業当時、地元の医師会では「すずきこどもクリニックでは、1日の患者数が100人を超えたら、スタッフにボーナスを出しているらしい」という噂話が挙がっていたそうです。

 

でも実際は、患者数が200人を超えたら臨時ボーナスを出していました。一般の医師にとって「1日の患者数100人」はボーナス級の出来事なのかもしれませんが、私の院にとっては「当たり前以下」だったのです。

 

そして、効率の良い診察システムの確立に成功し、患者一人あたりの診察時間を最大3分に抑えられるようになってからは、臨時ボーナスの支給もやめてしまいました。患者数200人が日常になってしまったからです。

看護師の問診で「診断に必要な情報」の9割を獲得

私の院では、医師である私の診察時間を、最大で3分以内に収めるようにしています。ちなみに、一人あたりの平均診察時間は2分半というところです。

 

これほどの短時間診察を可能にしているのが、看護師が行う綿密な問診です。私の院では、診断を下すために必要な情報の9割程度を、看護師が問診によって集めています。そして私は、問診で確認しきれなかった点のみを患者に質問し、診断を下す仕組みです。患者が診察室に入ってきたとき、私は「はい、看護師からお話は聞いております」と話します。これで導入が終わり、すぐに診察に入れるのです。

 

普通の医師は診察に入る前に、患者の症状などについて問いただしますが、私の院では看護師の問診で必要な情報をほとんど手に入れているため、追加質問の必要性が少ないのです。

診察中、看護師

診察中、私は看護師とほとんど目を合わせることがありません。患者を診察室に呼び込む際には、電子カルテで患者の情報を確認しながら、看護師に手で合図をするだけです。

 

また注射をするときは、後ろのほうに手を差し出すだけで、看護師が私の手の中にアルコール綿や注射器を手渡してくれます。注射時の手順は決まっていますから、看護師が事前に準備をしておくことで、作業時間を何十秒か短縮できるのです。

 

その間、私は患者の様子を観察したり、患者である子どもやその母親とコミュニケーションを取ったりすることに集中します。

 

例えば予防注射を打つときも看護師のほうはまったく見ず、子どもに「最近面白いアニメってあった?」「好きな食べ物は何? ああ、唐揚げなら先生も好きだよ」などと話し掛けます。

 

こうすることで子どもを怖がらせることなく、スムーズに注射を終えられます。また、ワクチンごとにシリンジや針の組み合わせの規則をつくっているため、誤注射も防止できます。

 

そして診察が終わりにさしかかると、私は紙のカルテに看護師への指示シールを貼ります。

 

例えば、熱が続き数日後に来院しなければならない患者の場合、「発熱が続く場合、●日後に再来院」と印字されたシールを貼るわけです。そして、このことを患者に説明し、日程を調整するのは看護師の役割です。

 

つまり、問診・診察や治療の準備・診察後の説明といった工程をすべて看護師に任せる体制を整えているため、私の診察時間は最小限に抑えられているのです。

 

シールをその場で書かず、事前に準備しているのも、時間短縮の工夫です。診察の最中に「発熱が続く場合、●日後に再来院」とカルテに書き込むと、それだけで十数秒がムダになります。

 

一方、事前に数十種類のシールを用意しておけば、それらをカルテに貼るだけで事足りるのです。

 

また、医師が患者にたくさんのことを説明すると、時間がかかりますし、患者も覚えることが大変です。そこでもシールが有効なのです。私の院では、診察に関わる事柄だけを医師から患者に説明し、それ以外については看護師が口頭で説明しながらシールをお薬手帳などに貼るなどして、分かりやすく伝えようとしています。

 

なお、オンライン診療の場合は、シールを併用して分かりやすく伝えるというやり方が使えません。

 

ただし、オンライン診療では「画面キャプチャー」が使えます。当院ではシールを画面上に出し、患者に画面キャプチャーをしてもらうことで代えています。なお、原則、医師、患者ともに録画は禁止されています。

「3分以内の診察」でも患者満足度を最大化する工夫

「診療時間は最大で3分」と聞くと、そんなやり方で患者から不満は出ないのかといぶかる人もいるでしょう。

 

しかし、いくつかの工夫を施すことで、私の院では患者の満足度を十分に高められています。

 

工夫の1つ目は、患者の待ち時間を極力短くすることです。体調が悪いなか、医療機関のロビーで長時間待っていることは、患者にとって本当につらいもの。

 

そこで私の院では、患者から予約電話が入ったら、その場で看護師が問診を行っています。こうすることで、患者が来院したらすぐ診察に入れる状況をつくり、待ち時間を最小限で済むようにしているのです。

 

テーマパークで3時間も待って乗ったアトラクションがほどほどの楽しさ止まりだったら、かなりの人が腹を立てます。一方、待ち時間が10分だけだったら、ほとんどが「ああ、良かった」と満足します。医療機関でも同じで、待ち時間が短いほど診療への満足度は高まります。

「雑談」はリピーター患者を増やすヒントの宝庫

2つ目の工夫は、患者とのコミュニケーションの質を高めることです。私は患者と接するとき、服装や容姿、女性の場合はメイクなどについてしっかりと観察するようにしています。

 

例えばラガーシャツを着ている男の子が来院したら、「ラグビーが好きなの? 私も学生時代にラグビーをやっていたんだよ」などと話をして絆を深めるのです。

 

また、保険証を見て話題を振ることもあります。学校の教職員や地方自治体の職員のように保険証を見るだけで保護者の職業が分かったら、そこから話を展開していくのです。

 

そして、こうして得た情報は欠かさずメモしておくようにします。

 

慢性疾患で何度も診療を行った患者のことをまったく覚えておらず、「今日はどこが悪いのですか?」などと聞いてしまったら最悪です。

 

また、例えば錠剤を飲むことが苦手な子どもに、新たに錠剤を処方するなどもNG。こうした対応をすると、患者は「この医者は私のことなどまったく覚えていない」と腹を立て、別の医療機関に流出してしまいます。

 

一方、雑談のなかで相手の趣味や好みなどを聞き、それをきちんとメモしておいたら、次の診療の際に「Aさん、お子さんはアニメの××が好きでしたね。春に始まった新シリーズは楽しいのですか?」などと話し掛けることができます。

 

また、相手が求める前に「Bちゃんはイチゴ味が好きでしたね。今日も、イチゴ味の薬を出しておきましょう」「Cくん、今日は気管支拡張用のテープはいりませんか?」などと先んじて提案できるのです。

 

すると患者は「この先生は私のことを大切にしてくれる」と感じ、医師への信頼を深めてクリニックの常連になります。こうした心掛けは、外来診療、オンライン診療にかかわらず大切です。

 

私の院の電子カルテには、雑談のなかから拾ったキーワードを記入するメモ欄があります【写真】。病名や処方についてはコピー&ペーストで事足りますが、こうしたキーワードだけはきちんとメモしましょう。ただし、こうしたメモを残していることを患者に悟られては絶対にいけません。

 

【写真】私の院で実際に使用している電子カルテ(メモ欄を活用する)

 

そして3つ目の工夫が、「患者を安心して帰す」ことです。

 

これは私の信念ですが、患者を不安な気持ちのまま帰宅させるのは、医師として正しくないことだと考えています。

 

そこで、患者さんに説明する際には、決して言いよどんだりせず、できるだけ言い切ることを心掛けています。そのためには、日頃から知識を貪欲に吸収して、確信を持って言い切れるだけのバックボーンを身につけておかなくてはなりません。

 

こうして患者と信頼関係を築ければ、リピーターを増やしやすくなります。また、治療効果も高まるものです。

 

 

鈴木 幹啓

すずきこどもクリニック院長

 

※本記事は書籍『開業医を救うオンライン診療』より一部を抜粋したものであり、掲載されている情報は出版時点(2021年7月)のデータに基づいています。

 

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※本連載は、鈴木幹啓氏の著書『開業医を救うオンライン診療』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

開業医を救うオンライン診療

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鈴木 幹啓

幻冬舎メディアコンサルティング

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