(※写真はイメージです/PIXTA)

ダラスを本拠とする世界最大(2019年の収益に基づく)の事業用不動産サービス会社、シービーアールイー株式会社(CBRE)。同社の「ジャパンリテールマーケットビュー 2021年第2四半期」より一部抜粋し、コロナ禍の主要都市のリテール市場について見ていきます。

東京:銀座

■ハイストリートにラグジュアリーの旺盛な出店ニーズが集中

今期(Q2)、ハイストリートの空室率は、前期比ポイント下落の5.1%となった。ラグジュアリーブランドやファッションブランドの需要が空室率を押し下げた。

 

銀座ハイストリート賃料は対前期比横ばいの24.3万円となった。今後、賃料は向こう1年間で3.2%落ち込むとみられる。ただし、2022年Q3には上昇に転じ、向こう2年間では1.9%減の水準まで回復すると予測する。

 

 

ワクチン接種の進展などによって今後の不透明感が払拭されつつあることから、長期的な視点を持って今から物件を抑えようとしているラグジュアリーブランドが複数みられている。7月に入って東京都では4回目となる緊急事態宣言が発出されたが、銀座ハイストリートの出店ニーズへの影響は今のところ限定的と考えられる。今後の賃料は、現在の予想に対して上振れる可能性もある。

 

前期(Q1)に引き続き、ラグジュアリーブランドから強い出店ニーズがみられている。ハイストリートの晴海通りにある募集物件では、10社ほどの申し込みのなかから、ラグジュアリーブランドが内定した事例があった。立地改善の移転ニーズで、賃料はコロナ禍前の水準とみられる。

 

並木通りの募集物件では、既に銀座エリアに2つの既存店舗を持つラグジュアリーブランドが、3店舗目の出店を決めた事例があった。好調な業績を背景に商品展開の拡充を図っており、相場並みの募集賃料に対して満額の申し込みだった模様。また、ハイストリートのなかでも好立地にある新規開発物件では、数年先の竣工にもかかわらずラグジュアリーブランドを含む20社ほどからの引き合いがみられている。

 

ハイストリートの新規開発物件や募集物件が増えており、銀座エリア内での移転ニーズや、銀座エリアに路面店舗がないリテーラーの出店ニーズを集めている。定期借家契約の満了や、建て替えに伴う立ち退き移転のニーズがあるリテーラーは、立地が希望に合えば面積や賃料はオーナーの希望条件を受容しやすい。なぜなら、銀座エリアの既存店舗に固定客がついているため、空白期間を作らずに移転先を決めることが重視されるからだ。

 

一方、銀座エリア初の路面店舗を探しているリテーラーは、よりよい賃貸条件の物件に出店しようとする傾向が強い。そのため、最終的な出店の意思決定に時間が掛かっているところがある。

 

ハイストリートで総じて旺盛な出店ニーズがみられている一方で、セカンダリーエリアにある、空室が長期化している複数の物件では、オーナーが賃料水準を下げる、または固定+歩合賃料にするなどの柔軟な姿勢をみせている。ただし、リテーラーの引き合いは弱く、テナントの決定には時間を要しそうだ。また、売上に占めるインバウンドの比率が高かったテナントのなかには、オーナーに対して現在も賃料の減額交渉をおこなっているところがある。

東京:表参道・原宿

■ハイストリートの募集物件に複数リテーラーから引き合い

前期(Q1)に引き続き、ラグジュアリーブランドからの強い出店ニーズがみられている。ハイストリートの表参道にある募集物件では、複数のラグジュアリーブランドのなかから募集賃料を超える金額で後継テナントが内定した事例があった。

 

同じ表参道の別の募集物件では、複数の高級時計ブランドからの引き合いがみられている。いずれも、既存テナントが業績不振を理由に退去する事例だ。また、近隣にある別の募集物件でも、複数のリテーラーから引き合いがある。相場を超えるオーナーの希望賃料には届かないものの、リテーラーが提示をしている賃料は現在の相場水準と同程度だ。

 

さらに、原宿エリアで立地改善ならびに拡張移転を決めたリテーラーの退去予定店舗には、複数のリテーラーが申し込みを入れている。建て替えによる立ち退き移転や、日本初出店となるリテーラーが含まれている。

 

一方、ハイストリートの竹下通りでは、業績不振による既存テナントの撤退などによって空室が増えている。リテーラーの出店ニーズはあるものの、その多くは事業規模が小さく賃料負担能力が低い。そのため、通りの相場賃料は下落傾向にある。表参道・原宿のハイストリート賃料は、原宿エリアの賃料低下から対前期比2.2%下落の17.38万円となった。

 

セカンダリーエリアにある新規開発物件では、内定テナントのキャンセルにより再募集となった区画があったものの、既に別のリテーラーで内定したようだ。

 

一方、周辺エリアの募集物件が増えたことで、立地や賃料などの優位性が見いだしづらい募集物件では、リテーラーの引き合いが弱い。また、既存テナントから業績不振による退去を相談されたオーナーのなかには、面積を縮小し賃料総額を低く抑えることで退去を回避させるなど、柔軟な姿勢をみせる事例がある。

 

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