※写真はイメージです/PIXTA

事業承継にともなう株式移転コストを抑える方法として、自社株の評価を下げる際、「合併による組織再編」や「不動産購入による総資産の拡大」という方法があります。ただし、単に税金を減らすことを目的とする合併は、税務当局に目を付けられるかもしれません。注意点を含めて解説します。

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赤字会社との合併で「区分変更」

自社株の評価を下げる手段である組織再編には、会社の合併も含まれます。

 

例えば、同一企業グループ内に高収益のE社と赤字が続いているF社とがあると、当然E社の株価は高く、F社の株価は低くなります。

 

では、F社の株価を純資産価額方式で評価するとして、もしF社の純資産を相続税評価ベースで計算したときにマイナス、つまり債務超過になるとしたらどうなるでしょうか? 純資産がマイナスなので、株価もマイナスになるのかというとそうはならず、株価はゼロ円で評価されます。

 

こういった場合に、E社をF社に吸収合併すると、F社のマイナス分がE社に取り込まれる形になりますので、E社の株価が下がります。すると、合併前のE社+F社(ゼロ)の株価よりも、合併後のE社の株価が下がることになります。

 

また、合併により、株価評価上の会社の規模区分が変わることもあります。

 

例えば、利益の高いE社が従業員15人で「中会社の小」に該当し、利益の低いF社が従業員55人で「中会社の大」に区分されていたとします。

 

中会社はいずれも、類似業種比準方式を100%使えません。ところが、両者が合併すれば従業員が70名になるので、大会社の区分となり、類似業種比準方式が100%利用可能となります。

 

このような合併が結果的に株式の評価額に影響を与えます。

 

なお、赤字会社や債務超過の会社との合併の場合、その経営上の合理性が税務当局に問われる場合があります。

 

赤字を取り込んで、単に税金を減らすことを目的とした合併であると判断されると、「行為計算否認規定」が適用され、マイナスを取り込む計算が否認される場合があるので、十分な注意が必要です。

 

仮に税務当局に否認されないとしても、そもそも債務超過の事業を存続させることが必要なのかは、要検討でしょう。

 

ほかにも注意すべき点がいくつかあります。その一つが、合併後、会社実態に変化のない場合以外には、数期の決算を経ないと類似業種比準方式の適用ができない点です。

 

万一、合併後すぐに相続が発生してしまい、純資産価額方式のみでの評価になると、株価が上がってしまうこともあり得ます。

 

そのため、組織再編の検討に際しては、長期的な見通しのうえで十分慎重な計画を立てることが必要です。

 

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