(※写真はイメージです/PIXTA)

日本政府の巨額な財政赤字は、きわめて深刻な問題であると考えられています。しかし「いまの世代が作った借金は、いまの世代で解消すべき」という発想で増税するのは、あまりにも短絡的であり、長期的な視点で見ても、よい結果になるとはいえません。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

「財政赤字は世代間不公平」との理解は、近視眼的過ぎ

日本政府の財政は毎年巨額の赤字を計上しています。財政赤字は国の借金となっているので、将来の増税で返済されることになります。したがって、「我々世代が増税を嫌って、財政支出を借金で賄うことは、後の世代に増税負担を押しつけることになり、〈世代間不公平〉である」といわれています。

 

たしかに、我々の世代が作った政府の借金を返済するための増税は、後の世代の負担になるわけですから、そこだけを見れば世代間不公平だというのは誤りではありません。

 

しかし、我々世代は家計金融資産を2000兆円持っていて、これは政府の借金の金額よりはるかに大きいわけです。これが次の世代に相続されるわけですから、それを含めて考えれば、世代間不公平などではないのです。相続した遺産の中から税金を払えばいいのですから。

「増税→預貯金で納税→次世代への遺産減少」

政府が「財政赤字を減らして後の世代の負担を減らそう」と考え、増税したとしましょう。我々の世代は預金を引き出して納税しますから、我々の世代が次世代に遺す遺産が減ってしまいます。

 

つまり「増税次世代の受け取る遺産」と「次世代の払う税」の、ネットで見た次世代の負担は減らないのです。遺産のほうが多いので「純資産に引き継ぐ純遺産は増えない」というべきかもしれませんが。

 

それだけではありません。増税によって景気が悪くなり、設備投資や住宅投資が減れば、次世代に遺せる工場や住宅が減ってしまうかもしれません。

 

失業は、本人にとって非常につらいものですが、マクロ経済的に見ても、使える労働力を無駄にしてしまうという、大変もったいないことなのです。そこで失われた「我々世代によって生産されたであろう物(財およびサービス)」が、次世代に引き継げなくなってしまう、というわけですね。

 

こうしてみると、財政赤字だけを考えれば世代間不公平に見えるけれども、遺産のことも考えると、世代間不公平はないわけです。存在するのは、遺産を受け取れる子と受け取れない子の「世代内不公平」なのです。

 

そこで筆者は、相続税の増税を主張しています。世代内不公平を少しでも減らすべきだからです。

 

もっとも、本当に増税すべき相続税は、子も親も配偶者もいない被相続人から、兄弟姉妹が受け取る遺産でしょう。これは相続税率を超高率にしてもいいと思います。

 

兄弟姉妹に遺産を相続させる必要性は乏しい、ということもありますが、それだけではありません。

 

被相続人が老後に受け取っていた年金は、自分の子ではなく他人の子が支払っていた年金保険料が原資なのですから、それこそ次世代のお世話になっているわけで、その分は可能な範囲で国庫に「返納」させるべきなのです。

 

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