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儲けのため? リスク回避のため?…「投資の目的」を考える
株式投資にしろ不動産投資にしろ、投資は目的を持って行うべきです。筆者は、老後資金での投資と小遣いでの投資を使い分けていて、前者ではリスクを避けるための投資、後者では儲けるための投資を行っています。
老後資金を全額預金にしておくと、インフレが来たときに目減り(買える物の量が減る)してしまいます。つまり、預金はリスク資産です。一方、株や外貨は値下がりのリスクがありますが、インフレに強いので、老後資金を預金と株と外貨に振り分けておくほうが「惨めな老後」になる可能性が低くなります。つまり、リスクを避けるために株や外貨を持っている、というわけです。
預金と株と外貨の比率は、各自がどれだけインフレを恐れているかで決めればいいと思います。ちなみに筆者は「少子高齢化による労働力希少(労働力不足と呼ぶ人が多い)で賃金が上がってインフレになる可能性」、「南海トラフ大地震で物価が高騰する可能性」が高いと思っているので、株や外貨のウエイトを高くしています。
リスクを避けるための投資であれば、実際には外貨や株を買うのではなく、内外株式の投資信託の積み立て投資がよいでしょう。投資信託であれば上がる株も下がる株も持つことになりますし、高いときも安いときも買うことになりますから、大儲けは狙えませんが、大損のリスクも小さいはずです。
儲けるための投資でも、リスクを抑えて着実に儲けたい場合には、株式投信の積み立てでいいと思いますが、もう少し果敢に儲けを狙う場合には個別株でしょう。
投資信託にしろ個別株にしろ、株式投資で儲けたいと思ったときには、「株価の変動を予測して、安く買って高く売りたい」と考えるのか「配当等のかたちで、企業の生み出す価値の分け前にあずかりたい」と考えるのかで、大きな違いがあります。前者は短期投資、後者は長期投資です。
「短期投資で儲けたい」≒「カジノのルーレットで儲けたい」
企業の価値は短期間では変動しませんが、株価は短期間で変動します。これで儲けようとするのが短期投資です。株価の短期的な変動は、「皆が値上がりすると思って買い注文を出すと値上がりする」といった動き方をします。ケインズはこれを「美人投票」と表現したようですが、美人投票については別の機会に詳述しましょう。
重要なのは「みんなが株価の上昇を予想して買い注文を出すか否か」を予想することは非常に困難だ、ということです。いい方を変えれば「大勢のプロが値上がりを予想して買い注文を出し、大勢のプロが値下がりを予想して売り注文を出しているから成立しているのがいまの株価だから、投資初心者が株価を予想することは困難だ」ということです。
つまり、短期投資で儲けたいというのは、カジノのルーレットで儲けたい、というのと似ているわけです。カジノより期待値が高い(儲かる確率が高い)ので、バクチ好きな人が短期投資をするのは悪くないと思います。
その際には、むずかしいとは思いますが、投資家たちの心理の動きを探ることが重要です。真実の追求はあまり重要ではありません。たとえば「人工知能ブームだが、自分は人工知能が役に立たないと知っている」という場合には、「とりあえずブームに乗って人工知能関連の銘柄を買って、人工知能ブームが去る前に売り抜ける」ことを狙うのです。
「この会社は10年後もしっかり稼いでいるだろうか?」
企業は、株主と銀行から資金を調達し、労働者を雇い、材料を仕入れ、製品を作って売ります。売値と仕入れ値の差が「付加価値」です。これが労働者への賃金、銀行への金利支払い、株主への配当支払い、という形で分配されるので、配当の形で分け前に応じよう、というわけです。
配当されなかった利益は内部留保されますが、そのぶんも株主のものということで、株価を押し上げる要因として働きます。
長期投資をする場合には、真実の追求が重要なので、「この会社は10年後もしっかり稼いでいるだろうか」を考えるべきです。日本株投信であれば「日本企業は10年後もしっかり稼いでいるだろうか」を考えるのです。
投資家たちが日本企業の将来をどう考えているかは、重要ではありません。10年も経てば投資家たちの考えは変わるでしょうから。むしろ、「投資家たちがこの会社の将来を暗く見ているから、この株は割安だ。いま買って持っていれば儲かるぞ」という方向で考えるほうがよいでしょう。
ちなみに、長期投資でバクチをすることも可能です。新興ハイテク株を買って、「企業が成長して多くの価値を生み出して株価が10倍になるか、企業が倒産して企業価値が0になるか」という賭けを楽しむのです。ちなみに筆者の小遣いは、短期売買ではなく、そうしたバクチに投じています。
本稿は以上ですが、投資判断等は自己責任でお願いします。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があります。
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塚崎 公義
経済評論家
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