(※写真はイメージです/PIXTA)

長引くコロナ禍、日本政府の財政状況を不安視する声が上がっています。政府の破綻といえば、記憶に残っているのがおよそ10年前のギリシャ危機でしょう。政権交代のタイミングで巨額の財政赤字が発覚し、その後、増税を試みるも国民が大反発し、デフォルトしました。当時から日本政府の財政赤字と重ね合わせる声が多数上がっていましたが、そもそも日本とギリシャの状況は根本的に異なるのです。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

大増税が大不況を引き起こし、増税叶わず「破産」へ

約10年前、ギリシャ政府が破産したことをご記憶でしょうか。財政赤字が巨額で、借金が返済できなくなったのです。借金返済のために大増税をしたのですが、それによる景気悪化で暴動が起き、これ以上増税するわけに行かないということで借金を踏み倒すことになったわけです。

 

このニュースを聞いて「日本政府もギリシャのように破産するかも知れない」と心配になった人も多かったようですが、ギリシャは日本とは置かれた状況が大きく異なるので、単純な類推はミスリーディングです。

 

とくに重要な違いは、ギリシャがユーロという通貨を使っているということです。自国だけではなく、ドイツ等と同じ通貨を使っていることで、さまざまな制約があったわけです。

ギリシャ国債、買ってくれる投資家が存在せず…

日本人投資家にとって、日本国債は最も安全な資産です。メガバンクに預金するより安全ですし、日銀券だって政府の子会社の発行した紙切れですから、日本政府が破産するときには紙屑になるでしょう。

 

米国債を買うには、円をドルに替える必要があり、そうなると為替リスクが発生してしまうのです。

 

というわけで、日本人投資家は消去法的に最も安全な日本国債を買っているわけです。この点については、拙稿『日本の財政破綻を憂う投資家が、国債を買い続ける納得のワケ』をあわせてご参照いただければ幸いです。

 

しかし、ギリシャ人投資家にとっては「ドイツ国債を購入する」という選択肢があります。為替リスクもなく、信用リスクもギリシャ国債より小さいからです。だから、だれもギリシャ国債を買ってくれず、新しい国債を発行することができなかったわけです。

 

それ以前に、ギリシャは経常収支が赤字で、政府の国債を外国人投資家に買ってもらう必要がありましたが、彼らにはギリシャ国債を買う積極的な理由がなかった、ということも大きかったわけですね。

「金融緩和」できなかったギリシャ

日本が大増税により大不況に陥ったら、景気対策として猛烈な金融緩和をするはずです。金融緩和が景気回復にどれくらい効果があるのかは、議論のあるところですが、少なくとも「できることは全部やる」はずです。それによって、少なくともある程度は景気が回復するでしょう。

 

しかし、ギリシャは金融緩和をしませんでした。ギリシャが使っているユーロという通貨は、ドイツ等と同じ通貨なので、金融を緩和するためにはドイツ等にも賛成してもらう必要があるのですが、賛成が得られなかったからです。

 

ヨーロッパで大増税をして景気が悪いのはギリシャだけで、それ以外の国はとくに景気が悪いわけではなく、金融緩和の必要性を感じなかったのですね。

 

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