【トランプ関税】株価暴落の最終局面?「狼狽売りで大損する人」「暴落メカニズムを理解して乗り切れる人」【経済評論家が助言】

【トランプ関税】株価暴落の最終局面?「狼狽売りで大損する人」「暴落メカニズムを理解して乗り切れる人」【経済評論家が助言】
(※写真はイメージです/PIXTA)

アメリカのトランプ大統領による関税引き上げ等の影響により、金融市場が大混乱に陥っています。株価大暴落の局面をどう乗り切ればいいのか、経済評論家の塚崎公義氏がアドバイスします。

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株価は「時として暴落する」もの

平均株価は、時として暴落します。悪いニュースに反応することもあれば、悪い噂に反応することもあります。市場の心理ですから、さまざまなことが起こります。また、平均株価の過去数十年のグラフを眺めてみれば、何度も暴落していることがわかります。

 

問題なのは、株価が暴落すると株価をさらに押し下げる力が働いて、暴落の幅が勝手に拡大していくメカニズムが働きかねない、ということです。

 

そのメカニズムをしっかり認識しておかないと、「株価暴落の最終局面で狼狽売りをして大損をした」といったことになりかねません。

「売りたくない売り」が出てくるワケ

「上がると思う人が買い、下がると思う人が売る」のが普通ですが、株価が暴落すると「上がると思っている人からの売り注文」が出てくるのです。これが株価を一層押し下げ、「理屈で説明できないほどの安値」が出現することがあります。

 

たとえば、借金で株を買っている人は「1,000円のとき、値上がりすると思って借金で株を買った。株価が800円に下がったから、さらに借金をして株を買い増そう」と考えるでしょう。しかし、銀行としては、借金で株を買っている人が株価暴落で破産するといけないので、急いで貸出を回収しておこうと考えるでしょう。そこで、銀行から返済要請が来て、投資家は以前買った株を売る必要が出てくるかもしれません。

 

機関投資家のなかには、担当者に「損切り」というルールを課しているところも多いようです。損失が無限に膨らむのを防ぐという趣旨なのでしょうが、「一定以上の損失を計上した担当者は、冷静な判断が難しいかもしれないので、持っている株を全部売って休暇を取って頭を冷やして来い」ということもあるのでしょう。

 

担当者としては、上がると思って買った株が値下がりし、「買い増ししたい!」と思っているときに売らされるわけですから、つらいでしょうね。

狼狽売りをする投資初心者、あらかじめ売っておく投機家

以上のような「売りたくない売り」によって、株価が理屈で説明できないほど安くなると、投資初心者はなにが起きているのかわからず、「この世の終わり」が来るかのような気持ちになり、持っている株を全部売ってしまうことも多いようです。

 

とくに、「十分値下がりしたから、いま買えば儲かるはずだ」と考えて買った株が、その後も値下がりを続け、理屈で説明できないような株価まで下がると、狼狽しない投資初心者は少ないかもしれませんね。

 

このように、株価が暴落すると「売りたくない売り」が株価をさらに押し下げ、投資初心者の狼狽売りが株価をさらに押し下げる場合が少なくありません。それを知っている投機家たちは、最初に株価が暴落した時点であらかじめ持っている株を売っておく場合も多いようです。

 

なお、ここで説明した「売り」の順番は、

 

①暴落 → ②売りたくない売り → ③投資初心者の売り → ④投機家の売り

 

ですが、実際の「売り」の順番はというと、

 

①暴落 → ②投機家の売り → ③売りたくない売り → ④投資初心者の売り

 

となります。

初心者が狼狽売りをすると株価が戻るワケ

上記の順で売り注文が出て、株価が大いに下がったところで、株価は下げ止まります。売りたい人が残っていないからです。そうなると、株価はスルスルと戻りはじめます。売り注文が少ないので、少しの買い注文でも株価が大きく戻ることになるからです。

 

投機家は、あらかじめ売っておいた株を、売った値段よりはるかに安い値段で買い戻します。機関投資家の担当者も、休暇から戻って売ってしまった株を買い戻すかもしれません。借金で株を買っていた人も、株価が戻れば銀行が再び金を貸してくれるようになるので、再度参戦するかもしれません。

 

狼狽売りをした個人投資家だけが、「もう株はこりごりだ。2度と株など買わない!」といって戻ってこない、というわけです。

 

しかし、これは大変にもったいない話です。狼狽売りで損をしただけでももったいないのに、将来にわたって株式投資で儲けるチャンスを自分から放棄してしまうわけですから。

損切りはすべきだが、狼狽売りは避けるべき

狼狽売りは絶対に避けましょう。平均株価が暴落したら、落ち着いて、深呼吸をして、過去数十年の平均株価のグラフをじっくり眺めてみましょう。株価は何度も暴落していますが、そのたびに戻って来ました。

 

「今度だけはいままでとは違う。株価は戻らない。売ろう」と考える理由はありますか? 理由が思いつかないなら、狼狽売りをせずに、じっと持っていましょう。

 

通常の暴落に際しての考え方は以上ですが、今回は冷静に考えても「関税戦争などで世界経済の枠組みが変わってしまうと株価は戻りにくい」という判断もあるでしょう。そう考えるなら、狼狽売りではなく冷静な売りを出すという選択肢もあるでしょうが、くれぐれも熟考して判断したいものです。筆者は「10年後の株価はいまより高いだろう」と呑気に考えて、売らずに見守るつもりですが。

 

ちなみに、本稿で説明したのは平均株価の暴落についてです。個別株が暴落した場合には、急いで売却(損切り)すべき場合も少なくありません。平均株価と個別株では、取り扱いを変えるべきケースが多いようです。そのあたりは、別の機会に詳述します。

 

今回は、以上ですが、投資判断等は自己責任でお願いします。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があります。

 

筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「THE GOLD ONLINE」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。

 

 

塚崎 公義
経済評論家

 

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