4―おわりに
ワクチン接種は大規模会場などを活用しながら急ピッチで進められており、医療従事者や高齢者の優先接種スケジュールに目途がたった自治体も多いようである。「しばらく様子を見てから接種したい」と順番待ち・様子見をしている人も、国内での接種実績が増え、優先接種が終われば自身の接種も検討するようになると思われる。近隣住民の接種率を公表する自治体もあり、接種に前向きになる試みとなりそうだ。
安全性への不安を感じている人においては、「しばらく様子を見てから接種したい」と考えている人もあり、より副反応が出やすいとされる2回目接種後の副反応の程度や件数、対応状況などを公表している中で不安が解消していく可能性がある。また、安全性への不安を感じている人の特徴として、妊娠中の人や授乳中の人が含まれる。日本産科婦人科学会からは2021年5月12日付けで、国内においても、現時点では世界的に接種のメリットがリスクを上回ると考えられることを提言している※。
※日本産科婦人科学会「COVID-19 ワクチン接種を考慮する妊婦さんならびに妊娠を希望する⽅へ(2021年5月12日)」特に感染リスクが高い職業に就いていたり、重症化リスクが高いとされる基礎疾患がある場合は積極的に考慮することのほか、現時点で妊婦に対して短期的安全性を示す情報が出つつあるが、中・長期的な副反応や胎児および出生児への安全性に関しては今後の情報収集が必要であることや、可能であれば妊娠前に接種すること、産婦人科医に十分相談し管理の下で接種することが望ましいこと等も記載されている。
しかし、自身の身体のみならず、胎児の健康も守らなくてはいけない妊婦の中には、慎重になる人がいるのも自然だろう。ただ、妊娠中に新型コロナウイルスに感染するのも非常にリスクが高い。同提言にもあるとおり、出産までは、家庭内での感染を防ぐためにパートナー等周囲の人が接種することもあり得るだろう。
2回接種することが面倒、注射が苦手の面倒さが理由となっている人には、若い人が多く、感染状況の公表や厚生労働省によるコロナアプリの開発などによって個人情報が保護されない事態が生じる可能性があることも不安に感じていることから、少なからず、国によるワクチン接種の強い推奨が負担になっている可能性がある。
自分自身のタイミングで日常生活の中で接種ができるような会場の整備や、副反応が出た場合の治療体制についての説明を行うほか、職場での特別休暇等の対応等、なるべく接種にともなう負担を減らす試みが必要だろう。
ワクチンが不要だと感じている人は、自分や家族の感染不安も少ない。「絶対に接種したくない」と考えている人も多い。国内のデータでも、ワクチン接種による個人の感染予防効果や、社会全体での損失の軽減効果などを示していくことが重要になるだろう。また、それでも全員がワクチンを接種するような状態にはならないと思われることから、感染経路や感染パターンを周知するなど、充実した情報開示を期待したい。
村松容子
ニッセイ基礎研究所
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