〈年金月25万円・退職金3,000万円〉輝かしく勇退した元大手企業部長…大衆居酒屋での飲み会で元部下ドン引き。「憧れの70歳元上司」が“1円単位で割り勘”の転落【FPが解説】

〈年金月25万円・退職金3,000万円〉輝かしく勇退した元大手企業部長…大衆居酒屋での飲み会で元部下ドン引き。「憧れの70歳元上司」が“1円単位で割り勘”の転落【FPが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

現役時代は高収入で余裕のある生活を送っていても、老後が安泰とは限りません。十分だと思っていた退職金は、さまざまな出費によってみるみる減っていき、年金だけでは生活が立ち行かなくなるケースも。「まさか自分が……」と思っている方も、他人事ではありません。本記事では、老後資金の不足がもたらす深刻な影響と、いますぐ始めるべき対策について、波多FP事務所の代表ファイナンシャルプランナー・波多勇気氏が解説します。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。

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輝かしいキャリアを歩んだ「憧れの部長」だったが…

かつて大手企業で部長職を務めていた田中正一さん(仮名/70歳)。部下たちからは「温厚で頼れるリーダー」として尊敬されていました。現役時代は月収80万円を超え、年に数回の家族旅行やゴルフ会員権購入を楽しむなど、いわゆる「成功者」としての生活を送っていました。

 

退職時には3,000万円の退職金を受け取り、年金は月額25万円と、老後資金の心配は不要にみえました。しかし、そんな田中さんが定年退職後、久しぶりに元同僚たちと集まった飲み会での出来事が、部下たちに衝撃を与えます。 

 

場所は大衆居酒屋。店員さんから会計を受け取った田中さんは「一人3,712円です」 といいます。その手にはスマートフォンの電卓アプリ。細かい割り勘を求める姿は、かつての気前のよさが影を潜め、部下たちは「別人のようだ」と感じたそうです。

 

飲み会後、かつての部下たちはひそひそといいます。

 

「田中さん、昔はまとめて支払ってくれてましたよね?」

 

「奢りだと思ったからきたのに」

 

「あーあ、大体店からしてランク落ちたよな」

 

「憧れていたのに、老後は悲惨だな」

 

飲み会解散後、帰路につく田中さんの表情にはどこか不安がにじんでいました。   

「老後資金3,000万円」では足りない現実 

田中さんのケースは、退職金や年金に頼る老後生活の限界を浮き彫りにします。

 

厚生労働省の中央労働委員会による「令和3年賃金事情等総合調査」(対象:大企業)によれば、大卒者の定年退職時の平均退職金支給額は約2,140万円です。一方、東京都産業労働局の「中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)」(対象:中小企業)では、大卒者の定年退職時の平均退職給付額は約1,092万円となっています。田中さんの退職金3,000万円は一般的な相場よりも多い額ですが、現実には以下のような出費で消えていきました。

 

●住宅ローン残債の一括返済:1,200万円

●子どもの結婚資金援助:500万円

●両親の介護費用:600万円 

 

残った金額は700万円。その後も日々の生活費や趣味への出費が重なり、定年から5年で貯蓄は200万円を切ったそうです。 

 

また、老後の生活費は意外と高額です。総務省の調査によると、夫婦2人世帯の月平均支出は約28万円。さらに、突発的な医療費や介護費用が加わることで、生活費が予想以上に膨らむことがあります。 

 

田中さん自身も「年金だけでなんとかなると思っていたけれど、物価上昇や医療費の負担増がこんなに大きいとは思わなかった」と語ります。

 

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※プライバシーのため、実際の事例内容を一部改変しています。

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