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輝かしいキャリアを歩んだ「憧れの部長」だったが…
かつて大手企業で部長職を務めていた田中正一さん(仮名/70歳)。部下たちからは「温厚で頼れるリーダー」として尊敬されていました。現役時代は月収80万円を超え、年に数回の家族旅行やゴルフ会員権購入を楽しむなど、いわゆる「成功者」としての生活を送っていました。
退職時には3,000万円の退職金を受け取り、年金は月額25万円と、老後資金の心配は不要にみえました。しかし、そんな田中さんが定年退職後、久しぶりに元同僚たちと集まった飲み会での出来事が、部下たちに衝撃を与えます。
場所は大衆居酒屋。店員さんから会計を受け取った田中さんは「一人3,712円です」 といいます。その手にはスマートフォンの電卓アプリ。細かい割り勘を求める姿は、かつての気前のよさが影を潜め、部下たちは「別人のようだ」と感じたそうです。
飲み会後、かつての部下たちはひそひそといいます。
「田中さん、昔はまとめて支払ってくれてましたよね?」
「奢りだと思ったからきたのに」
「あーあ、大体店からしてランク落ちたよな」
「憧れていたのに、老後は悲惨だな」
飲み会解散後、帰路につく田中さんの表情にはどこか不安がにじんでいました。
「老後資金3,000万円」では足りない現実
田中さんのケースは、退職金や年金に頼る老後生活の限界を浮き彫りにします。
厚生労働省の中央労働委員会による「令和3年賃金事情等総合調査」(対象:大企業)によれば、大卒者の定年退職時の平均退職金支給額は約2,140万円です。一方、東京都産業労働局の「中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)」(対象:中小企業)では、大卒者の定年退職時の平均退職給付額は約1,092万円となっています。田中さんの退職金3,000万円は一般的な相場よりも多い額ですが、現実には以下のような出費で消えていきました。
●子どもの結婚資金援助:500万円
●両親の介護費用:600万円
残った金額は700万円。その後も日々の生活費や趣味への出費が重なり、定年から5年で貯蓄は200万円を切ったそうです。
また、老後の生活費は意外と高額です。総務省の調査によると、夫婦2人世帯の月平均支出は約28万円。さらに、突発的な医療費や介護費用が加わることで、生活費が予想以上に膨らむことがあります。
田中さん自身も「年金だけでなんとかなると思っていたけれど、物価上昇や医療費の負担増がこんなに大きいとは思わなかった」と語ります。
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