(※写真はイメージです/PIXTA)

現在、マンション総数は660万戸以上に上り、そのうち約106万戸が旧耐震基準で建設されたもので、マンションの耐震化が進められています。その一方で、国はマンションの建替えを円滑に進めようとしていますが、実際のマンションの建替えは進んでいないのが現状です。その原因はマンション住民の高齢化と経済格差、立地条件が建替えだと指摘されていますが…。※本連載は、松本洋氏の著書『マンションの老いるショック!』(日本橋出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

「建替えよりも修繕へ」と方向転換する管理組合

■進んでいないマンションの建替え

 

耐震性不足のマンションの耐震化の促進のために、耐震性不足のマンションの建替え等の円滑化を図るべく、多数決によりマンション及びその敷地を売却することを可能にする制度としてマンション建替え円滑法が平成26年に一部改正されました。

 

従来は、マンション敷地を売却することは、処分行為として法律に基づき「区分所有者の全員合意」が必要でしたが、耐震性不足の認定を受けたマンションについては、区分所有者等の4/5以上の賛成で、マンション及びその敷地の売却を行う旨を決議できることができるようになりました。

 

このように、国は建替えを円滑に進めるべく施策を実施しておりますが、実際のところマンションの建て替えはあまり進んではおりません。

 

国土交通省から、平成31年4月に発表された「マンション建替えの実施状況」では,建て替え現在建替え工事が完了しているマンションはわずかに244管理組合実施中、実施準備中のマンションを含めても279管理組合ととても建替えが円滑に進んでいるとは言えない状況になっています。

 

 

 

なぜ、マンションの建替えが円滑に実施されないのでしょうか。

 

理由としては、合意形成にかかる労力が半端ではなく、お金も時間もかかることにあります。

 

区分所有者の有志による検討開始から新しいマンションの完成まで、少なくても7年程度はかかります。区分所有者の合意形成の進み具合や工事の難易度によっては、10年を超える場合も珍しくありません。

 

マンション竣工時は区分所有者の経済状況、健康状態は同じようなものでしたが長い年月を経るに従い区分所有者の高齢化が進み個々の状況が著しく変化することから合意形成に時間を要することになります。現在のマンションを新しいマンションに建替えた場合の面積が十分でない場合は、面積を増やすために多額の追加費用がかかることがあります。

 

また、工事期間中の仮住まいや引越し費用が別途かかります。

 

マンションの建替えも戸建住宅と同様「費用の全額を自己負担して行う」が基本的な考え方です。ただし、建替え後のマンションの一部を売却し、そのお金を建替事業費に充当することにより自己負担の一部を軽くすることができます。

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マンションの老いるショック!データから学ぶ管理組合運営

マンションの老いるショック!データから学ぶ管理組合運営

松本 洋

日本橋出版

分譲マンションは現在、「区分所有者の老い」「建物設備の老い」という二つの老いの問題を抱えています。 本書では、国土交通省から公表されているデータや、筆者のマンション管理士としての経験から得た知識を基に「マンシ…

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