不正予防には「悪者の思考回路」を知ることが必要
ときどき、日本企業による品質不正や粉飾決算等々が報じられることがあります。「何十年も前から不正を続けていたのがバレた」というニュースを見るたび、「そうだとすると、いま現在不正を行っているけれども、バレていない企業も多いはずだ」と思ってしまいます。
筆者は、不正は絶対に悪いことだと思いますし、不正をした人々を擁護しようというつもりはまったくありません。しかし、不正の再発を防ぐためには、なぜ不正が起きるのかを考えてみる必要があるわけで、そのためには悪者の頭のなかに入って悪者の思考回路を知ることが重要でしょう。
たとえば、「泥棒は悪い奴なのだから、言い訳など聞く必要はない」という考え方もありますが、彼らの思考回路を理解することが役に立つかもしれないわけです。たとえば、泥棒の動機が「飢え死にしそうだから」ということならば、生活保護の充実が泥棒を減らすかもしれませんから。
というわけで、本稿では「仮に筆者が品質不正や粉飾決算をするとしたら、どういう思考回路だろう」ということを考えてみます。決して筆者が不正を働こうとしているとか不正を容認しているといったことはありませんので、誤解されませんように。
日本企業の多くは従業員の共同体、だからバレにくい
仮に不正が多数の企業で行われているのだとしたら、それはなぜなのでしょうか。その理由のひとつがまさに「何十年もバレなかった」というところにあるのでしょう。
不正を働くか否かを検討する際に重要なのは「バレる確率」でしょうが、日本企業は従業員の共同体なので、バレにくいのです。
最近は非正規労働者の比率が増えたり、株主重視企業が増えたりして共同体的な性格が少しずつ薄れてきたようですが、まだまだ本質は正社員の共同体なのだと思います。
非正規社員による不正の告発といったことは起こり得るかもしれませんが、正社員が極秘情報を非正規社員と共有する事は考えにくいでしょう。株主重視の方は利益配分に関する株主重視ですから、不正防止には寄与していないのでしょう。
日本の刑法では、重罪に問われるケースはまれ
不正を働くか否かを検討する際に、もうひとつ重要なのは、バレたときの制裁の重さでしょう。それについては、日本の刑法の罪の軽さが影響しているはずです。
法律自体は刑罰を厳しく定めている場合も多いのですが、裁判の実際では重罪に問われる事は少ないのです。
筆者が法学部で習ったのは「殺し6年」という言葉です。殺人罪の平均が当時は懲役6年だったのでしょう。いまはもう少し長いようですが、大差はないようです。
おそらく、日本では罪を犯すと刑法上の刑罰に加えて厳しい社会的制裁が課せられるので、それとの合計でちょうどいい制裁になっているのでしょう。本人がいつまでも前科者として扱われるのみならず、家族も白い眼で見られたりするようですから。
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